静かでやるせない夜だって、あなたがいればたちまち温かみが加わって。その背中に頭を預けるのが好きだった。
この時だけはわたしだけのあなただって、思わせるほど。その背中は温かくて、頼りがいのある逞しい背中。
「シカクさんのこの背中がすき」
いつものごとく頭を預ければ、トクントクンと穏やかな心音と肌のぬくもり。
夜の寂しさも、汚い感情も何もかも浄化してくれるみたい。
「背中だけってのは寂しいなァ」
「ち、違います!背中だけってわけじゃなくてっ」
慌てて顔をあげて服を引っ張れば振り向いたシカクさんの瞳と目が合った。それはそれは、優しい眼差し。窓辺から入った月明かりに照らされてより一層色気が増す。
そんな優しい瞳を向けられると、体中が熱くなって仕方がない。
「…わざと言ったんですか」
「いや、本音だ」
「じゃあどうしてそんな目で見るんですか…」
「お前にはどんな目に見えてんのか分からねえが、」
俺はいつもこんな目でオメーを見てねえか?
振り向いて引き寄せられて、たちまちシカクさんの腕の中。
見上げればやっぱりあの目でわたしを見るから、胸が苦しくなってシカクさんの胸元に顔をうずめた。
そんな愛おしそうな目で、わたしを見ないで。
ぜんぶぜんぶ、欲しくなるじゃない。
だけど、確かにその目に満たされる自分がいるのも本当で。
見ないで、だけど見て欲しい。
わがままばかりが募っていく。
「なまえ、顔、見せてみろ」
ゆっくりと腕を緩められて、離れた体温が名残惜しいと思いながら見上げれば。同じ温度の指先がわたしの頬を撫でた。
「オメーも同じ目、してんじゃねえか」
指先の、あなたの温度に絆されてもっともっと触れて欲しくて瞳を閉じた。そうすればすぐにもっとも熱い唇が、わたしに食らいついてくれるから。
夜は静かだ。
静かでやるせなくてさみしくて。いつだってあなたに会いたくて。
会えない日には夜空を見上げながら、この空を辿れば会えるのかもしれない、そんなことばかり考えている。
だけど会えたときは。
あなたに触れることができたときは。
そんな夜を埋めるように、抱き合うの。
全部埋められるように。
もう少し、あともう少しだけ。あなたの隣りにいたいから。
このまま溶けてなくなっちゃえばいいのにって願っていることは、夜空に輝く月しか知らないんだ。
夜を愛して、朝を恐れた暗闇の夜よりも、あなたが居なくなった眩しい朝の方が怖いなんて。
end.
▽とにかくシカク夢を!
という設定でした!
シカクは初でなおかつ悲恋ちっくになってしまいすみません…!
素敵なリクエストありがとうございました☆
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