*学パロ


もしもサンタクロースが本当にいるのなら。
どうしても欲しい願いがある。





「サーイ!」

「わっ」


背中に衝撃。
だけどいつものこと。振り向けばやっぱり彼女がいる。


「クリ子、危ないよ」

「だってサイの背中見つけるとダイブしたくなるんだもん」

「ダイブって…」


彼女が言うとおり、彼女に見つけられるといつも背中に飛び乗ってくる。いつもの光景、いつものこと。
だけどふわりと香る彼女の香りと温かい感触にいつもドクリと胸の内が響くのを彼女は知らない。
多分、気付きもしないと思う。



「雪降りそうだね!ホワイトクリスマス!」

「うん、降りそうだね」

「家着いたらすぐサイんち行く!おばさんケーキ作ってくれるって言ってたもんね」

「うん、待ってるよ」


僕と彼女はいわゆる幼なじみで。
家も隣同士、小さい頃から一緒。
彼女いわく、大親友…らしい。そう言われたことがあった。


「うわっ、さむい!」

「風強くなってきた。ほら、クリ子」

「え?マフラー、貸してくれるの?」

「どうしてクリ子は冬なのにマフラーもしてないの」

「今日は天気が良かったから!じゃあ借りるね、ありがとうサイ」


そう言って僕のマフラーを首に巻く。
あたたかそうに微笑んだ彼女に触れてるそのマフラーにさえ、嫉妬している自分に気づいて。

彼女の隣りにいれてくすぐったい気持ちと、どこかチクリと苦しい気持ち。
どちらかひとつにして欲しいのに人間てなんて面倒なんだろう。


「マフラーあったかい、サイ、だいすきー」


そんな残酷な言葉、聞きたくないのに。
だけどいちいち反応する気持ちはその言葉で満たされていく、なんて。馬鹿みたいだ。


「…僕も。好きだよ」


ーー馬鹿みたいだ。
馬鹿みたいに愛おしそうな顔をしていると、自分でも分かる。
でも何も知らない彼女は、知ってるー!なんて言いながら無邪気に笑うんだ。


「サイ、プレゼント何がいい?」

「…別になんでもいいよ」

「じゃあ明日買いに行こっか」


よし!寒いから早く帰ろ!
そう言ってぐいっと引っ張られた腕。
少しだけ彼女の手に触れて。
…今日だけは、ほんの少し欲張りになってもいいだろうか。なんて思ったのはやっぱりクリスマスという行事のせいなのか。


「…サイ?」

「ほら、帰ろう」


少しだけ触れていた手をぎゅっと握って彼女みたいに無邪気に笑ってみせた。
そうすれば、

「うん!」

きっと彼女は安心して、離さないでいてくれるから。


木枯らしの吹く薄暗い路地を。
小さい頃みたいに手を繋いで歩いていく。

この時間だけ、止まればいいのに。
叶わない願いだけが冬の空に消えていく。

あの頃よりもずっとずっと成長した彼女の手はとても温かくて…とても苦しくなった。






(いつになったら僕は。君に嘘をつかなくなるんだろう)



end.




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