「はたけ、カカシ?」
「ん、よろしく。あと"先生"って付けなさいネ」


あれはまだ雪の溶けていない春先だっただろうか。まだ下忍の小さい彼女に出会ったのは。
俺自身だって、まだ若かったからこんな小さい子に忍術を教えるのも煩わしくて。
それでも必死について来る彼女に惹かれてしまったのは俺の方。俺のそばに居座る彼女の温かさを手放したくないなぁなんて思ってしまって。
何個も年が離れているのにアスマからはロリコンだなんて言われたけど。

ま、好きになってしまったもんは仕方ない。

そう思うようになるにはしばらく時間は経ってしまったけど、彼女も同じ気持ちと知った時、何でもっと早くこの小さな手を掴まなかったんだろうと思ってしまった。

掴んだ手は今までの人の中で一番と言っていいほど温かくて。その熱は、普段冷たい手だと言われる俺にしてみればちょうどいい。
ずっとずっと握っていたい。離さないで、もうこの手だけをずっと。





…カカシ、

…カカシ!



「カカシー!!」
「…??」
「朝だよ!今日任務早いんでしょ?」
「あ…ああ」


気がつけばそこには愛しい彼女の顔。あの頃に比べたら本当に大人になった彼女の顔。
ずいぶん懐かしい夢を見たもんだと思いながら、ふっと笑ってしまったら何笑ってんのー?なんて横目で聞いてきた。


「ん?なんでもなーいよ」
「え〜?何?気になるじゃん!」


ねー何なのー?と言いながら起き上がった俺の後ろをねぇねぇとついて来る彼女に、さっき見た夢を思い出して、年はとったけどこういう所は変わらないなぁと思ってぶはっとまたしても吹き出してしまった。


「あー!また笑ったー!!」
「あぁ、ごめんごめん。本当になんでもないよ」

クツクツと肩で笑っていたら今度はフグみたいに膨れっ面で、


「もういい!ご飯の支度の続きしてくる!」


くるり、台所へ翻す彼女。そんな機嫌を損ねた彼女のために、手を掴んで抱き寄せてその膨らんだ頬に唇を寄せて。


「すごくいい夢を見ただけだよ」
「え?!どんな??」


拗ねていたのに忽ちぱっと明るくなる彼女の表情はまだあどけない。
だけど、やっぱり月日は確実に流れていて、出会った頃と変わったことの方が多いだろう。


それでも、


「あ、ねえ手出して」
「えーなんで?」


ぎゅっと握った彼女の両手はあの時と同じ、温かいまま。
きっとこの先、


「昔の夢を見てた。この手の熱変わらないネ」
「えー?そうかなー?」


何があっても、


「そうだよ。ちっとも変わらない」


それは確かで、俺にとってとても大切で、大好きな手であり続けるんだろう。



懐かしむ



あの時の小さな手のぬくもり。
年を重ねるにつれて愛しさが増していくんだよ。



end.



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