頬杖をついて、外を見つめる。その黒い瞳は何を見ているんだろう。
白い肌にふわりと掠める漆黒の髪がとても綺麗で。

あたしはその姿に恋をした。

窓側の一番後ろ。その前には彼。彼のその姿を見れるのは、後ろの席のあたしの特権。
会話なんて何度かしかしたことはないけれど、あたしはどうにかその視界に入りたくて1日に一度は絶対に話掛けるようにした。帰ってくるものは全て素っ気ないものだけど、話掛ければ彼は、真っ直ぐとあたしを見てくれるから。


「サスケくん」
「…なんだ」
「いつも何見てるの?」
「……」
「外に何かあるの?」
「…お前には関係ない」


いつも通り、本日の会話はこれで終わり。だけど名前を呼べばわざわざ後ろを振り返ってくれることが嬉しくてあたしは自然と頬が緩む。

この席になって、もう何ヶ月も経ったけど時にはその素っ気ない態度に切なくなることもあって。苦しくて、好きな感情をやめてしまおうと思ってしまったこともあったけど。


「…鳥」
「え?」
「そこに鳥がいるの知ってるか?」
「え…あっ!」
「……」
「わぁ!すごく綺麗な鳥だね!」
「それを見てた」
「そうなんだぁ、サスケくん鳥が好きなの?」
「別に。好きでも嫌いでもない」


じゃあ何で見てたの?なんて聞けなかったけど、今日はたくさん会話が出来た。
鳥を一生懸命見てたのかな?そう考えるとなんだか可愛い。

日に日に色んな彼を知ることが出来る。それなのにどうして、好きな感情をやめることなんて出来るんだろう。


日の光を浴びながら、今日も彼は外を見つめてる。その瞳にあたしを写していなくても、それでもあたしは彼の背中に好きだよって心の声で囁いた。

諦める



あなたが好きだよ。
その感情を無くすことは到底無理だ、そんなことあたしはすぐに諦めた。

(「鳥なんかただの言い訳で、本当は窓ガラス越しに写るお前を見てた」
そう言われたのは、比較的すぐあとのこと。ちょっとだけ赤く染めた頬の彼を見たのは初めてで。また一つ新しい発見、好きが増える)



end.



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