蝉の声が聞こえる。
もう夏なんだ、と寝そべりながら思った。
窓から入る風が、思った通り夏のにおいがする。
隣りからスースーと穏やかな寝息。
無邪気にあたしの隣りに眠りこけているその寝顔が可愛くて、思わず頬が緩んだ。

(あつ…喉乾いた)

思いながら、もそもそとベッドから起き上がる。
隣りに眠るナルトを起こさないようにと、ちらりと様子を見ながら立ち上がろうとしたらナルトのお腹が出ていることに気が付いた。

(お腹壊しちゃうよ、ナルト)

いくら暑いからって窓からの風は直に当たる。
そうじゃなくても期限切れの牛乳とか飲んじゃうナルトだから、お腹には気をつけなきゃ。
そんなことを思いながらタオルケットをかけてあげようとした時にちらりと見えた肌に滲む印のしるし。
黒い渦巻きのようなそれは、この可愛い寝顔には似つかわしくない。

色々な事情はナルトに聞いている。
だからこそこのしるしを見ると重たく感じた。

男らしい腹筋のうえに滲む黒い渦巻き。
そっと触れてみると心なしかピリッと痛んだ。

(ナルト…、負けないで)

ここに封印してある獣。いつかその獣よりも強くなれるって信じてる。
里を襲った恐ろしい獣だけど、いつかナルトの未来に繋がる。


(だから、負けないで)

心の中で呟けば、触れた指先はなぜか熱くなった。この印だってナルトのものだと思えば愛しくて。なぞるように撫でらればピクリと動く体。

だけどまだ目が覚めていないよう。

それなのにあたしの心の中の呟きに、力強く答えるみたいに。
そっと触れていたあたしの手を、ナルトのたくましくて大きな手が重なった。

負けねえってばよ。

って言ってるみたいに。



触れる



end.





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