なんとなく空を見たら、どんより雨模様。

それだけじゃないけど、なんとなく嫌な予感がしたんだ。

どうして嫌な予感っていうのは、当たってしまうんだろう。



別れる





空はやっぱり薄暗かった。
それでも前にある後ろ姿はいつもと変わらず凛々しかった。

結った黒髪とピアスと緑色のベスト。

その背中に飛びつきたいと思ったのは言うまでもない。
今だって思ってるんだよ。
ねぇ、気付いて、気付いてよ。


「いつ行くの」

「日が暮れたら出る」


そう…なんだ。
小さく呟いた声はすぐに穏やかじゃない風に消えていく。
聞こえるのは、木々の葉がこすり合う音だけだった。

忍の任務で里を離れる。
そんなの、今に始まったことじゃない。
長期任務だって乗り越えた。
それが、忍を、好きになる覚悟だって分かっていたから。


「また会えなくなるね」

「しばらくはな」


しばらくってどのくらい…?何日?何ヶ月?何年?
聞きたいのをぐっとこらえた。


今回の任務は無期限らしい。


そう聞いたのはさっきだった。


「天気悪いね」

「ああ、こりゃ降りそうだな」


めんどくさそうなその表情を今度はいつ見れるのだろう。
その頃には…あたしのこと覚えてる?

会えない間に、気持ちだけが溢れそうで怖い。
今、彼に好きと伝えたら…。あたしのことを脳の片隅に入れてくれるだろうか。
そんなせこいことしか思い付かなくて。


「シカマルっ、」


意を決したように呼びかければ、軽く返事をしたシカマルが振り向いた。なかなか続こうとしない言葉が喉の奥で詰まる。

好きよ、好き…大好き


言葉にすれば簡単なのに、どうして声となって出てくれないの。
口を開いても、声は出ず。
そのかわりにじわりと鼻の奥がツンと痛くなって涙が浮かんだ。




だけど、涙の中に映る目の前のシカマルがふいに笑ったから今度はドキンと鼓動が鳴る。


「シカ…マル?」

「なんっつー顔してんだよ」

聞こえた声と一緒に、感じたのは頭の上に優しいぬくもり。
くしゃくしゃとあたしの髪を撫でながら、シカマルはまた笑った。


「帰ってきたらまた、遊んでやっから。泣くんじゃねえよ」


そう言いながら、笑った顔が今までで一番優しくて。
その腕に、抱きついてしまいたかったけど。


「暇だから早く帰ってきてよ!」


抱きついてしまいたかった。
好きって伝えたかった。

だけどそれは今じゃないって、シカマルが教えてくれたような気がしたから。


「待ってるからね!」


手をあげて旅立っていくシカマルの背中を見送った。
こぼれ落ちる涙はそのまま、明日からはもう泣かない。

今度逢ったときは必ず。その大好きな背中に手を伸ばすんだ。
シカマルが、迷わずに受け止めてくれるような、そんな女になるからね。

そう決めたのならほら。
別れなんて怖くないから。



結った黒髪とピアスと緑色のベストと。

あたしの大好きなその背中を目に焼き付けて。



end.





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