結局、最初に入ったお店には これ というものは見つからなかった。
デザインはばっちりでも肌触りがイマイチだったり、自然素材の柔らかなランジェリーが見つかったかと思えば、それはリーシャが身に付けるにしてはあまりにもエロチックだったり‥。
リーシャ好みのデザインと、リーシャのこだわる肌触り。
そこにゴーシュさんの好みをもが加わるわけだから、当然 ストライク・ゾーンもそれなりに狭くなる。

「‥‥そうね。
 次は、リーシャがお気に入りでよく足を運んでるお店に行きましょうか」

最初のお店を出た後、お店の正面から少し離れた脇にずれて次の行き先を話し合う。

「ここからだと少し歩きますけど、大丈夫です?」

「構いません。
 リーシャ好みのものが手に入るのなら、何キールでも歩きますよ」

「やだ、幾らなんでもそんなに遠くないですよ。
 ‥‥ふふっ」


 ‥リーシャ、幸せ者ね。
 下着一つに、こんなに一生懸命になってもらえるなんて。


「行きましょう」

「はい」

リーシャを想うゴーシュさんの心に胸を暖められた私は、セントラル中央からは反対方向にある 彼女のお気に入りのお店 へと足を向けた。
二人でお喋りしながら数十分ほど歩くと、扉に可愛らしいドアベルの着いたお店が見えてくる。

「‥あのお店です」

歩きながら手を伸ばして指し示す。
お店のショー・ウィンドウには、雰囲気の違う下着を着せられた展示用のマネキンが二体 並んでいた。
右側には年代を選ばないコンサバティブな可愛さのあるものが、左側には大胆なデザインが見る人のエロスを掻き立てるものが飾られている。

「‥‥あ」

飾られているランジェリーを見て、つい立ち止まってしまった。

「リリィ?
 どうかしましたか?」

「あ、ううん。何でもない。
 このお店ね、こうやってマネキンに着せてる下着って このお店のオリジナル・デザインなの」


 ‥‥新作、出たんだ。
 今度 買いにこなくっちゃ♪


「‥アニバーサリー・デザインって書いてあるわ。
 お店の創立記念で数量限定品みたいね」


 ‥‥50セット限定かぁ
 お取り置きしとこうかな‥。


「右側に展示されてる下着。
 ああいう感じが、リーシャ好みよ。
 ‥行きましょう」

扉を開けると、ドアベルがカランカランと音をたてる。
同時に、店員さんの声が響いた。


「 いらっしゃいませー 」


ゴーシュさんと並んで、店内を見て回る。

「ここなら、素材的にはどれを選んでも間違いないと思います。
 ゴーシュさんの気に入るデザインがあればいいんだけど‥」

そう呟きながら、並べられた下着に視線を泳がせた。

「あ‥これがいいですね」

ゴーシュさんが、上下セットにされた一つの下着を手に取る。

「あ、可愛い。」

それは、淡い水色のギンガムチェックの生地にピンクのリボンが付いた、シンプルながらも愛らしい雰囲気を漂わせる下着だった。


 ゴーシュさん、こういう感じが好きなんだ。
 リーシャと好み、合うのね。


「素敵ね‥♪
 いいと思う。これなら、リーシャの好みともバッチリだわ」

「じゃあ、これにします。
 会計は‥‥」

水色の下着を手に、ゴーシュさんが店内を見回す。
彼のその動作に合わせてぷらぷらと揺れるプライス・カードが、私の目を引いた。

「‥あ!
 ちょっと待って!!」

「‥え?」

「その下着も、アニバーサリー・デザインの一つみたいね。
 これ、見て。
 ツー・チョイス って書いてあるわ。
 その下着、おぱんつ 二種類あるみたい。
 セットにできる おぱんつ が ひもぱんつ と てーばっく のどちらかで選べるみたいだわ」

「あ‥本当だ」

「んっと‥‥あ、あった。
 ゴーシュさんの持ってるのが てーばっく、ひもぱんつ はこれね。
 どっちにされます?」

ゴーシュさんがプライス・カードを確認している間に、棚からもう一方のデザインを探して彼に差し出す。
ひもぱんつ はパンティーの両サイドがヒモ状でほどけるようになっている。

「そうだな‥
 ‥‥こっち、ですね」

ゴーシュさんは手にした下着をしばらく見つめると、お眼鏡から外れた片方を棚に戻した。
手元に残った方はといえば‥‥‥


 ‥‥!
 ひもぱんつ だ‥‥


「‥‥ふふっ」

「‥?
 どうかしましたか?」

「いいえ♪
 何でもありません♪」


 ジギーなら、てーばっく だろうなって思ったけど‥
 ゴーシュさんは やっぱりそう来るか♪


「じゃあ、お会計しましょう」

「はい。
 ‥‥すみません、これを、包んでいただけますか?
 贈り物用に、お願いします」

近くで棚整理をしていた店員さんに、ゴーシュさんは自分から声を掛けた。

「かしこまりました。
 お買い上げ、ありがとうございます!」


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