ワッフルの甘い香りに包まれた店内。
近くのテーブルのオーダーだろうか‥
コーヒーの芳しい香りが私たちの側まで遊びに来る。

「‥―お世辞ではありませんよ。
 あの日のリリィは、本当に可愛らしかった」

紅茶の注がれたカップを片手に、ゴーシュさんが微笑みながら話す。

「仕事中の貴女は、いつも凛として高尚な空気を纏っていますし。
 それが、先日はとても柔らかで女性的でした。
 服装が可愛らしく見せていただけではなくて‥
 ふとした仕草や表情、態度などの リリィそのもの が、とても愛らしくて。
 オンとオフでのあのギャップも、貴女の素敵な魅力ですね。
 ‥もっとも、オン・オフに限らずとも リリィ自身が既に魅力的なギャップの塊ですけれども。」

「やだ、もう。
 そんなにおだてないでくださいってば‥!」

‥過ぎた公私のギャップ、内外のギャップ。
それは人に言われずとも自認している事ではあるものの―‥
まさか ゴーシュさん相手に、こんなにも好意的に捉えられているとは思ってもおらず‥恥ずかしいやら くすぐったいやら 嬉しいやら。

「ですから、お世話ではありませんって。
 正直な話、とても驚きましたし。
 リリィは休日にはいつもあのような姿を?」

「あのような姿 って、服装のことですか?」

「ええ」

相槌を打たれ、当時の自分の姿を思い返す。

花柄、ワンピース。
赤いヒールの靴に、お気に入りのイヤリング。
館長から頂いた 髪飾り。

「ん‥そうですね。
 あんな感じが一番多いですね。
 可愛いのとか清楚なのは好きですから。
 ときどき全く正反対の格好もしますけど」

「全く正反対の格好、とは‥?」

「んー‥色々。
 ああいう格好もしますし」

お店の白い柵越しに、私たちの座る席の側を通り過ぎていった若い女性を目で示す。
釣られて、ゴーシュさんも私の視線を追っていた。
目線の先は、白いTシャツにジーンズというボーイッシュなパンツ・ファッションの女性。
‥ボーイッシュ・スタイルは照れた博士によそよそしくされたのが印象的だった。
博士、解りやす過ぎだし。

「他は、ヘソ出し とか」

「‥っ‥!?」

突然、ゴーシュさんが紅茶を吹く。

「え!? ちょっと、ゴーシュさん 大丈夫!?!」

「だ‥大丈夫、です。‥すみません」

ごほごほと噎せ込み、涙目になっていた。
慌ててバッグからハンカチを取り出し、手渡す。

「‥汚してしまいましたね。申し訳ない」

「いえ、構いませんけど‥
 そんなに意外ですか? ヘソ出し」

「え、ええ、まあ‥。
 その‥ヘソ出し、なんて大胆な服装、リリィが好んで着るとは思いませんでした」

もごもごと口ごもる。
‥ゴーシュさん、赤くなってる。
そんなに意外かなあ‥。

「‥私、そんなに上品に見えます?」

「ええ、とても。」

「‥‥即答ですか」

「はい。
 好みから姿形にしても雰囲気にしてもですが、普段から貴女はリーシャとは正反対なので‥
 先入観ですね。すみません」

「あは‥いいですよ、そう言われるのは慣れてますから。
 紅茶 吹いた人は、初めてですけど。
 ‥ふふっ」

申し訳なさそうに謝罪をされて、別に構わない と両手をひらひらと振って返した。

「しかし、ジギー・ペッパーは何も言わないのですか?」

「え? ジギー?
 どうして?」

「いえ‥‥
 彼は、貴女の事となると眼の色が変わりますからね。
 そんな大胆な服装して出歩いているなどと知りましたら、一悶着起きそうな気もするんですが〜
 もしリーシャがそんな格好していたら、悪い虫でもついたら と やはり心配になりますからね、僕は」

リーシャのそんな格好 なんてのを、こっそり想像してついつい吹き出してしまう。
有り得ないわね。
私が好む服装って、基本的にはあの娘の趣味じゃないから。

「‥?
 どうかしましたか?」

「いえ、何でも。‥ふふっ。
 ジギーは、特に何も言いませんよ。
 私が着飾る事が好きなのは知っていますし、ジギーと一緒にいるときにちょっと露出度高めな格好も普通にしますし」

ボディラインの出る、ぴったりしたワンピース。
わざと誘うような、極に丈の短いミニスカート。
胸元をチェーンで編み上げた、チラ見せ必至な服―‥

ジギーと逢っているときの少し大胆目な姿を思い出しながら答える。

「‥‥不思議な人ですね 彼は。
 リリィはスタイルも良いですから、そんな格好をしていたら それこそ皆の注目を集めるでしょうに‥
 そういう事に対して、彼は嫌がらないのですか?」

ゴーシュさん、無意識かな‥
スタイルも良い なんて さらっと言われて、ちょっぴり照れくさくなってしまう。

「セクシーな服装、好きですから。彼。
 それもあるんじゃないかなぁ」

「え、そうなんですか?」

「ええ。この間のような可愛い系も好きみたいだけど、過激な感じも好きらしくて―‥」

照れた眼差しのジギーを思い浮かべ くすくすと笑っていると、からかうようなゴーシュさんの声が聞こえた。


「 ‥‥それは、良いことを聞きました 」


「え―‥何がですか?」

「いえ、なんでもありません。
 彼はそれでも貴女を抱いたりしないんですね。
 ‥僕なら二人っきりでいるときに ヘソ出し なんてされたら、美味しくいただいてしまいますけどね」


 な、なん‥‥っ!?!


「や‥やだ! もうっ!!
 こんな場所で、ゴーシュさんてば!!」

彼の爆した一言から親友カップルのエロティックさが伺われ、血流が一気に逆上していく。
ああ‥もう 恥ずかしいっっ

「‥‥ふふ。
 リリィ、顔が真っ赤ですよ。
 可愛いですね」

「も、もう!
 知りませんっ!!
 サンドイッチ、食べちゃいますから!」

からかい腰のゴーシュさんを前に、照れ隠しのようにティー・スタンドの一段目に手を伸ばした。


*****☆*****☆*****

ゴーシュがリリィを誘った真意&服装対談と相成りまして候。
若干 別話のネタバレも含みます。
ジギーとか博士とか‥ね♪(*ノノ)

同時進行の時間軸はあえて前後させて書いています。
補足事項は今回も特に無しですね。
まだまだ続くよっ(*ノノ)

Fri.19.Aug.2011
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