コンコン。
そんな時だった。私の家の扉を叩く音が聞こえてきたのは。
「誰だろ?私、出てくるから、ちょっと待ってて」
そうリリィに言い残して、私はぱたぱたと走って玄関に急いだ。ガチャリと扉を開ければ、そこに立っていたのは私の大好きな人ゴーシュで、顔が自然と笑顔になる。
「ゴーシュ!」
「こんばんは、リーシャ」
にっこりと微笑むゴーシュに、私は思わず抱きついた。
「あのね、今リリィが来てるの。それでもよかったら上がって?」
「リリィが来ているんですか。彼女に会うのは久しぶりですね」
そして、ゴーシュと手を繋いでリリィを待たせてるリビングに向かう。
「リリィ、ゴーシュが来たよ!」
ガチャリと扉を開けて、ゴーシュとリリィを対面させる。私の大切な親友と私の大好きな恋人。二人とも私の大事な人。
「こんばんは、リリィ。お久しぶりです」
「こんばんは、ゴーシュさん。お久しぶりです。確か、数ヶ月前の配達帰りに鎧虫に襲われてた所を助けてもらって以来ですよね」
「よく覚えてましたね」
ほのぼのとした気持ちのままゴーシュとリリィのやりとりを見ていたら、聞き逃せない事が聞こえてきた。
「って、私そんな話聞いてないよ!リリィがゴーシュに助けられたなんて…」
思わずリリィに対して、抗議の声が出る。会ってたなら教えてくれたっていいじゃない。
「言ってないんだから、当たり前じゃない。数ヶ月も前の事なのよ。わざわざ言う必要もないでしょう?」
「それはそうだけど…」
いつの間にかいつもの調子に戻ったリリィに正論を言われて、もごもごと口ごもる。でも、私に内緒で会ってたなんて納得できないよ。
「もう、そんな事で妬かないの。あんまり妬きすぎると、嫌われちゃうよ?」
むぅーと膨れる私に、リリィがとどめの一言を言い放った。
「そ、それは困る!」
当然、私はそれ以上何も言えなくなって、しょんぼりと落ち込むのだった。
「まあまあ。リリィもそれぐらいにしてあげてくれませんか?」
そんな私を見かねたのか、ゴーシュが助け船を出してくれた。彼の優しさに胸がじーんとする。
「ったく、ゴーシュさんは本当にリーシャには甘いんですから」
リリィは深々とため息を吐いた後、私の所まで来て小声で話しかけてきた。
「リーシャが心配しなくても、ゴーシュさんはリーシャ以外見てないわよ。ほら、今だってリーシャが妬いたって分かって喜んでるみたいだしね」
言われてゴーシュを見てみると、確かにどことなく嬉しそうな雰囲気を出している。
「二人の邪魔しちゃ悪いから、そろそろ帰るとするわ。あ、私一人で帰れるから送ってかなくて結構よ」
そう言ってひらひらと手を振りながら、リリィは一人で帰って行った。
リリィが帰った後、残された私とゴーシュはしばらく無言だった。妬いたって知られて、何となく気まずい。
「彼女と何話してたんですか?」
俯いていた私に、ゴーシュが話しかけてきた。
「内緒だよ。女の子の秘密。と言いたい所だけど、ゴーシュにだけお話するね。他の人には内緒だよ?」
そう念押ししてから、私はリリィと話した事をゴーシュにも話していく。
「あのリリィがそんな悩みを抱えてるなんて意外ですね」
聞き終えたゴーシュの感想。やっぱり意外だよね。あのリリィだもの。
「でしょでしょ?私も初めて聞いて、とても驚いたの。驚いたと言えば、リリィとジギー・ペッパーの恋模様。まさか、何もないとは思わなかったよ」
「まあ、恋愛の仕方は人それぞれですしね」
そう言って、ゴーシュは私をぎゅっと抱きしめ、私の首筋に顔を埋めた。
「どうしたの?」
「リーシャは僕に抱かれて、幸せを感じてくれるのでしょう?」
「………うん」
問われて小さく頷いた。親友にあれこれ訊かれるのと、本人に訊かれるのでは恥ずかしさが全然違う。さっきよりも、今の方が数倍以上恥ずかしい。
「嬉しいですよ。僕もリーシャにもっと喜んでもらえるように、がんばらなくてはいけませんね」
「え?」
言われた言葉に驚いた。何で、リリィの話からそうなるの?
「何事にも向上心は必要ですし。さあ、それでは早速いただきます」
「って、それなんか違うから!」
なんてツッコミも空しく、私はあっさりとゴーシュにいただかれてしまったのだった。
その数週間後、顔を真っ赤にさせたリリィが私の所にやってきた。彼女曰く、ゴーシュがジギーに相談内容を直接話してしまったらしく、ジギーを納得させるのが大変だったそうな。全くゴーシュってば、内緒だって言ったのに。
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恋愛相談
もう!!
リーシャったら、何でもかんでもゴーシュさんに話すんだから!!!
ゴーシュさんには心配されて面と向かって聞かれるし、ジギーはジギーで ゴーシュさんにけしかけられて落ち込んで謝りに来るし‥!
もう、恥ずかしいったりゃありゃしないっ!!
‥でも‥‥
‥‥‥相談乗ってくれて、ありがとね。
from リリィ・フォルトゥーナ
Fri.21.Jan.2011