「‥さて、業務報告も終わったし。
今日は館長にも呼び出されてないし。
‥‥‥帰ろっ♪」
配達を終えて、諸々の雑事も終えて。
すべての業務報告を完了させて、足取りも軽く郵便館二階の廊下を歩く。
最近は特に、業務終了から帰宅前に館長室に呼び出されることが増えた。
それも職務上の公的なものならばまだともかくも、その殆どが専ら館長の私事私情。
君の顔が見たかった〜だの何だのと、プライベートで職権濫用の餌食にされているのはもう日常茶飯事と化してしまった。
今日は、珍しくも それ が無い。
時間的にも余裕があるし、気分も良い。
少しお買い物でもして帰ろうかな―‥
そんな事を思っていた時だった。
「 リリィ 」
「‥‥え?」
突然呼び止められて、振り返る。
声の主は私のよく見知った親しい先輩BEEだった。
「え、ゴーシュさん?
お疲れさまです。
‥どうかしたんですか?」
「お疲れさまです、リリィ。
少し、相談したいことがあるんですが。
いいでしょうか?」
「相談‥?
別に構いませんけど‥」
珍しい‥
ゴーシュさんが、私に相談事なんて。
なんだろ‥。
「よかった。
あのですね‥もうすぐ、リーシャの誕生日ですよね」
「あ、そういえばそうですね。
彼女の誕生日は今月末だから、あと二週間も無いわね。」
「ええ。
それで、リーシャに誕生日プレゼントを用意したいんです。
プレゼントにと考えているものがあるんですが〜
それを、僕一人だけで見立てるのが難しくて。
もし迷惑でなければ、選ぶのに付き合ってくれませんか?」
‥なるほど、そういう事か。
確かに、女の子への贈り物。
男の人が選ぶのに難しい場合もあるわね♪
「リーシャに、誕生日プレゼントですか。
解りました。
私でよければ、喜んで♪」
「そうですか、よかった‥!
買いたいものは決まってるんです。
それに少し、アドバイスを頂ければと思いまして。
貴女はリーシャと親しいですし、助かります」
ほっとした顔を見せた後、ゴーシュさんは嬉しそうに微笑んだ。
「ふふっ。
プレゼント選びするのに、わざわざ私にまで声掛けてくるなんて。
幸せ者ね、リーシャは。
‥あ、でも、いつ行きます?
ゴーシュさん、私たちより配当多いし、忙しいでしょ」
「うーん、そうですね‥
リリィは、次のお休みはいつですか?」
「‥私?
私は、明後日にお休みを頂いてますけど」
「明後日、か‥
解りました。では、明後日にしましょう」
「え!?
ま、待って。 ゴーシュさん、明後日はお仕事じゃな―‥」
「これから館長に有給申請してきます」
「えぇ!?!」
言いかけた言葉を遮り、更には私の心配も余所にゴーシュさんは独り納得を始める。
「善は急げ、です。
この先リーシャの誕生日前日までにリリィと休みが重なる日なんて、見込みありませんからね。」
「そりゃ、まぁ‥
そうかもしれませんけど‥」
「明後日はリーシャは出勤日ですし、ちょうど都合もいいです。
ああいう性格ですからね。
出来る限り、見つかりたくありませんし。
‥時間と場所は、どうします?」
ゴ‥ゴーシュさん、もう明後日で決定としてコト進めてる‥。
予定が入っていたわけでもないし、私は別に構わないんだけど‥‥ほんとにいいのかなぁ
彼の独断専行の早さに、私の方が面喰らって戸惑ってしまった。
「そ、そうですね。
お店の開店時間の都合もあるし‥お時間は、十刻くらいが妥当?かな?
場所は‥
セントラルの中央広場を抜けた先にある、星屑の噴水で如何でしょうか。
あそこなら中央道から若干外れてるから、配達中の皆さんに鉢合わせする可能性も低いし」
「なるほど‥‥解りました。
では、明後日の十刻、星屑の噴水前で」
「はい」
「ありがとうございます、リリィ
また後日に。」
にこやかな表情でお礼を言い、お辞儀をしてから帽子のズレを直し立ち去ろうとする。
‥が、彼の向かう方向にあるのは郵便館のホールで―‥
「いいえ、こちらこそ。
‥‥って、ゴーシュさん!?
休暇申請は!?!
そっち、館長室と逆ですよ!!」
「‥あ!! 忘れてた!!!」
思わず叫ぶと、思い出したようにばたばたと反対方向へと走り出した。
「‥‥‥ゴーシュさん、意外とそそっかしいんだ‥‥。ふふふっ」
館長室へと駆けていく彼の後ろ姿を見つめていると、つい にこにこと顔が綻んでいく。
「明後日はゴーシュさんとデート、か。
意外な約束ができたわね‥♪」
さあ、今日はもう帰りましょう―‥
少しだけ浮かれた心を胸に、私は自宅への帰路へとついた。
*****☆*****☆*****
ゴーシュとデートのお約束、の巻。
さて、シリーズ最大の謎‥どうしてあの日、リリィとゴーシュがデートしていたのか がやっと明らかになりましたね☆(笑)
次回もお楽しみにっ♪(*ノノ)
Sun.12.Jun.2011