ジギーの優しいキスが私のくちびるを甘く濡らした後も‥
彼はいつまでも私を解放しようとはしなかった。
私も私で、ジギーの腕の中に抱かれていることにとても居心地のよさを感じていて‥ジギーの胸に背中を預け、そのまま暫くの間 二人で寄り添っていた。

「‥リリィ」

「ん‥‥なぁに‥?」

「さっき‥
 その、胸の大きな女性は好きか と聞いたな‥」

「あ‥」

ほんの少しばかり躊躇いがちに言い淀みながら、ジギーが呟く。
‥そうだ。
さっき、それを聞こうとして 大ぽか をやらかしたんだ‥。

「‥どうして、そんなことを聞く」

「ん‥‥。
 その‥ね」

先程の諸業。
思い返すと恥ずかしくなってしまう。

「‥リーシャが、郵便館で聞いて気にしてた噂 って言うのが、それなの」

「‥‥?」

会話の内容を端折って話すとジギーの疑問符が漂ってきた。
顔が見えなくても、雰囲気で何となしに解る。

「えと‥。
 男の人は小さいよりは大きな胸の方が好きらしい‥とかって、郵便館の女の子たちが噂してたんだって。
 リーシャったら、それを聞いて 自分は胸がない って気にしたらしくて。」

「‥‥フィゼルの家で話題になったというのはその話か」

「そう。
 私のこと羨ましがるし‥
 大きけりゃいいってもんじゃないのよ、って言ってもなかなか納得しないし」

リーシャとの会話を思い出し、苦笑いしながら話す。

「‥でね。
 いきなりそんなこと言い出すもんだから、てっきりゴーシュさんに何か言われでもしたのかと思って聞いてみれば、理由は単なる女同士の噂話、でしょ?
 もう、参っちゃった」

「ゴーシュ・スエード‥?」

「ん‥ゴーシュさんが何か不満でも言ったのか、って聞いたの。
 実際はそんなんじゃなかったんだけど、あの娘ってば ちっとも大きくならない〜 って騒いで。」

「‥‥‥ちっとも大きくならない‥?」

「うん。
 あの娘ったら、どうしたら大きくなるの? なんて言い出すから。
 好きな人に触ってもらえば?って言ったら、ゴーシュさんにいつも揉まれてるのにちっとも大きくならない、って騒い―‥」
そこまで言って、はた。と止まった。


  私ったらまた大馬鹿あぁ――――っ!!!


「‥あ‥っと、そのっ‥‥」

「‥‥‥‥‥。」

きっとまた真っ赤な顔をしているであろうジギーの無言が、私の中の恥ずかしさをますますと煽っていく。

「‥‥‥えと、だから‥その‥‥」


  あ〜〜んっっ
  もう、馬鹿あぁぁっ!!


「‥‥それで‥?」

「えっ‥」

「リリィも、気にしてるのか‥?」

「私‥?」

「さっき‥俺に、聞いただろう」

肩に、ジギーの顎が載せられる。
掠める吐息がくすぐったい‥。

「噂話自体は別に気にしてないけど‥。
 その、ジギーはどっちが好きなのかな、って思って‥」

「‥‥そうか」

ふっ‥と笑う感覚がした。
‥もう、ジギーってば‥‥。

「‥‥‥そうだな」

「え‥?」


「大きい方がいい」


  えっ‥‥‥。


「‥そうなの?」

「ああ」


  ‥ちょっと意外か―‥


「‥リリィが、大きいから」


「え?」


  どういう意味‥?


「私‥‥?」


「ああ‥。
 リリィが小さければ、小さい方がいい」

  ‥‥‥‥‥。


「‥‥‥ぷ」

「‥‥駄目か‥?」

「駄目じゃ、ないけど‥‥
 何、それ‥ふふっ。」

「‥笑うなよ」

「だって‥‥‥うふふっ」

「‥‥馬鹿」

「どっちが」

「どっち‥‥?
 そんなこと、決まっている」

「え‥?」

不意に、ぐいっと身体の向きを反転させられて―‥


「 二人とも、だ 」


甘く痺れるくちづけの園に、堕とされた―‥。


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