難しい面持ちのゴーシュさんが、思い出すようにぽつぽつと言葉を零す。
「‥そう、ですね‥。
リーシャに逃げられるようになったのは、ここ数日前から‥ですよね」
「ええ‥‥。最後にあの娘と話したのって、確か‥」
彼の問いかけるような呟きにつられて、私も記憶を遡っていく。
「‥そうよ。郵便館の受付とホールを繋ぐ廊下で会ったんだわ。
ど真ん中に突っ立ってたから、声掛けたの。
そしたら 配達行ってくる、って慌てて逃げられて‥」
「‥‥そうですか。
その近辺で、何か心当たりになるような出来事ってありませんか?」
「そうねぇ‥‥」
リーシャに逃げられた日の前日は、私はお休みだった。
夕方には、ジギーが集荷に帰ってきて顔を出してくれて。
翌朝すぐ配達に出る、休みが取れなくてすまない って、そのまま泊まっていってくれたのよね。
ジギーってば、らしくもなく花束なんか抱えてて‥たくさんの、リーリウムの花束。
ゴーシュさんに リーリウムの花束 頂いたばっかりだったから、お部屋の中 リーリウムの花だらけになっ――‥
「 あああ!! 」
「どっ、どうしたんですか!? リリィ!?!」
「あったわ! 心当たり!!」
「本当ですか!?」
あの馬鹿娘――っ!!!
「 ええ!
心当たりどころか、むしろ決定打よ!! 」
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