「帰るぞ」
リリィに叩かれた事と、ゴーシュが彼女を追って行ってしまった事がショックで、しばらく動くのも忘れていた私はジギーの声ではっとする。
「家まで送る」
言われた言葉に耳を疑った。ジギーが、私を家まで送ってくれる…?
「…いいの?」
「…何がだ?」
ぽつりと私の口から出た疑問の意味が分からなかったのか、ジギーは聞き返してきた。
「私なんかを家に送ってもいいの?」
「………。行くぞ」
リリィを追いかけなくていいの?という問いかけに答える事なく、彼はすたすたと歩いて行ってしまう。
「どうした?」
「あ…、今行く」
ある程度進んだ所でこちらを振り向いたので、慌てて走っていく。
「ありがとう…」
我が家の前に到着したから、私はジギーに送ってもらったお礼を伝えた。道中、彼は私の歩幅に合わせてゆっくりと歩いてくれたのだ。それの感謝も入っている。
「おい」
「え?」
玄関の扉を開けようとした所で声をかけられたので、急いで振り向くと、こちらをじっと見ているジギー。
「もう少し、回りをよく見た方がいい」
それだけ言い残して、彼は私に背を向けて歩き出す。その言葉の意味が分からない私は、彼の後ろ姿を見つめていた。
*****☆*****☆*****
リリィに殴られた事が余程 衝撃的だったのか。
あいつが怒ると至極怖いのは今に始まったことではないが‥フィゼルは初めてだったようだな。
しかし‥
ゴーシュ・スエード、貴様は配慮が足りん。
フィゼルには隠すことが得策ではない事くらい、気付いてやれないのか? あいつは。
from ジギー・ペッパー
Thu.20.Jan.2011