ゴーシュとリリィを避け続けて、数日。私はハチノスの人通りの少ない廊下で、ゴーシュとリリィが仲良く談笑している姿を目撃してしまった。
「ゴーシュ…、リリィ…」
思わず、二人の名前を呟く。二人の姿は私から見てもとてもお似合いで…。
「リーシャ…」
不意にゴーシュがこちらを見て、驚いたように私の名前を呼んだ。その時…。
「…ちょうどいいわ。探す手間が省けた」
リリィが、一歩前に出てくる。
「リーシャ。あなた一体どういうつもり?ここ数日、私たちのことを露骨に避けて。ゴーシュさんや私に、何がしたいの?新手の嫌がらせでもしてるつもり?」
「それは…」
リリィの手厳しい追求に、私は言葉に詰まって何も答えられなかった。二人の恋人宣言を聞きたくなくて、ずっと逃げているから。
「…そう。何も答えないつもり、なのね。いいわよ。粗方想像はつくから。どうせ、私がゴーシュさんと一緒に歩いてる姿を目撃して、二人は付き合ってるんじゃないか、とでも思ってるんでしょ。それが現実になるのが怖くて、確かめる事もせずに、その場しのぎで逃げ続けて」
リリィの言葉は、まさしく図星だった。
「…気がすむまで、勝手にそうしていればいいわ」
溢れてくる涙をそのままに、私はくるりと向きを変えて歩き出す。
「リーシャ!」
「ほっとけばいいの、ゴーシュさん。少し懲りた方が良いのよ、あの娘は」
結局、ゴーシュもリリィも私の後を追ってくる事はなかった。
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しとしとと
ゆめゆめ在らぬ 思ひ降る
暮れも摘まらむ 孔雀菊かな
from リリィ・フォルトゥーナ
Tue.18.Jan.2011