ゴーシュとリリィを避け続けて、数日。私はハチノスの人通りの少ない廊下で、ゴーシュとリリィが仲良く談笑している姿を目撃してしまった。

「ゴーシュ…、リリィ…」

思わず、二人の名前を呟く。二人の姿は私から見てもとてもお似合いで…。

「リーシャ…」

不意にゴーシュがこちらを見て、驚いたように私の名前を呼んだ。その時…。

「…ちょうどいいわ。探す手間が省けた」

リリィが、一歩前に出てくる。

「リーシャ。あなた一体どういうつもり?ここ数日、私たちのことを露骨に避けて。ゴーシュさんや私に、何がしたいの?新手の嫌がらせでもしてるつもり?」

「それは…」

リリィの手厳しい追求に、私は言葉に詰まって何も答えられなかった。二人の恋人宣言を聞きたくなくて、ずっと逃げているから。

「…そう。何も答えないつもり、なのね。いいわよ。粗方想像はつくから。どうせ、私がゴーシュさんと一緒に歩いてる姿を目撃して、二人は付き合ってるんじゃないか、とでも思ってるんでしょ。それが現実になるのが怖くて、確かめる事もせずに、その場しのぎで逃げ続けて」

リリィの言葉は、まさしく図星だった。

「…気がすむまで、勝手にそうしていればいいわ」

溢れてくる涙をそのままに、私はくるりと向きを変えて歩き出す。

「リーシャ!」

「ほっとけばいいの、ゴーシュさん。少し懲りた方が良いのよ、あの娘は」

結局、ゴーシュもリリィも私の後を追ってくる事はなかった。




*****☆*****☆*****
‥‥‥‥。

 しとしとと
  ゆめゆめ在らぬ 思ひ降る
   暮れも摘まらむ 孔雀菊かな

   from リリィ・フォルトゥーナ

Tue.18.Jan.2011
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -