「結局、昨夜は眠れなかったな…」
今日配達するテガミを鞄の中に入れて、ハチノスの玄関に向かって歩いていく。
幸いな事に、今日はまだゴーシュとリリィに会っていなかった。昨日の事もあるし、どんな顔して会えばいいか分からないから、ちょうどいい。あとはこのまま配達行って、二人に会わないようにして帰れば問題ないよね。
「リーシャ、おはようございます」
なんて考えていたら、後ろから突然声をかけられた。慌てて振り向けば、そこにいたのはいつもと変わらない笑顔のゴーシュ。急に、昨日の二人の姿が脳裏によみがえる。
「お、おはよう、ゴーシュ。それじゃ私、配達行ってくるね!」
「リーシャ…?」
挨拶もそこそこに、私は大急ぎで駆け出した。不思議そうに私を呼ぶゴーシュの声を聞かなかった事にして。
「びっくりした…」
しばらく走った先で、私は立ち止まって息を整える。まさか、朝からゴーシュに会うとは思わなかった。会えたのは嬉しいけど、昨日の事があって逃げてきちゃった。あのまま話していて、リーシャ、僕と別れて下さいなんて言われたら、絶対に立ち直れないもの。
「リーシャ?どうしたの?」
「リリィ!?」
今度はリリィに声をかけられて、私は思わず驚いた。
「そんなに息切らして、何かあったの?」
ふんわりと笑うリリィを見て、再び昨日の二人の姿が脳裏によみがえる。
「な、何にもないよ!じゃあ、配達あるから行ってくる!」
私はまたも、駆け出した。私、やっぱりゴーシュさんとお付き合いするなんて言葉、聞きたくないよ…。
*****☆*****☆*****
リーシャってば、慌てて走っていっちゃった。
何だか逃げられたような気もするけど‥?
‥気のせい、よね。ふふっ。
from リリィ・フォルトゥーナ
Tue.2.Dec.2010