今日の配達が思ったよりも早く終わって、久々に我が家でのんびりしようと思いながら、歩いている途中の事だった。

「あ…。やだ、いつの間にかこんな所まで来ちゃった」

「…本当ですね。僕まで気付きませんでした」

「ふふっ。お互いに…夢中でしたね。あのお店の魔法かしら」

聞き慣れた恋人と親友の声が耳に入ってきて、思わず足が止まる。

「今の声は、ゴーシュとリリィ?」

どこにいるんだろう?と辺りを見渡して、やっと二人を見つけた。私からある程度離れた後ろの方で、私服姿の二人が楽しそうに会話を交わしている。

「もしかしたら、そうなのかもしれませんね。…今日一日、とても楽しかったですよ。ありがとうございます、リリィ」

「そんな、こちらこそ…。とても素敵なひとときを、ありがとうございます。こんな素敵なプレゼントまでいただいちゃって。本当に、なんてお礼を言ったらいいか…」

呆然とする私をよそに、両手いっぱいの花束を手に持ったリリィが、嬉しそうにゴーシュを見つめている。

聞こえてきた内容からして、大好きで大切な恋人と親友が今日一日、二人で一緒に過ごしていたという事が分かった。

「いいえ、それは僕の気持ちですから。気にしないでください」

「ゴーシュさん…」

ゴーシュもゴーシュで、とっても嬉しそうで…。胸が痛くて、苦しくなる。

「何で…?どうして、あの二人が一緒にいるの?」

思わず漏れた疑問の声。でも、離れた所にいる二人には届かなくて。私に気づく様子もなく、二人は笑顔で話を続けている。

「それじゃあ…私はこれで失礼しますね。今日は、本当にありがとうございます」

「…ここで、ですか?せめて家まで送らせてください」

「え…そんな、そこまでお気遣い頂かなくても結構ですよ」

「いいえ。それぐらいはさせてくれませんか?今日は、僕が誘ったんですから。最後まで付き合わせてください」

「!?」

ゴーシュの言葉を聞いて、私は息が詰まるような衝撃を覚えた。ゴーシュがリリィを誘ったって、どういう事?

「そういう事なら……お言葉に、甘えます。ありがとうございます、ゴーシュさん」

「いえ。では、行きましょうか」

「はい…!」

リリィが嬉しそうに声を弾ませる。そして、何の躊躇いもなくゴーシュの隣に立った。いや、立ってしまったのだ。

「嫌…。嫌だよ。そこは、私の場所じゃないの?何で、ゴーシュの隣にリリィがいるの?」

取り残された私は、二人の後ろ姿が見えなくなるまで、ただただ立ち尽くすのみだった。




*****☆*****☆*****

ゴーシュさん、凄く素敵だったの。
ずっと私のこと気遣ってくれて‥
ジギーも館長も凄く優しいけど、二人とはまた違った 優しさ だったわ。
本当に、素敵な一日をありがとう。ゴーシュさん!!

   from リリィ・フォルトゥーナ

Sun.14.Nov.2010
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