ある日の夜。私はゴーシュにリリィとした会話の内容を話していた。

「という話をリリィとしたんだけど、ゴーシュはどう思う?」

「どう、とは?」

「私の反応って、楽しいの?」

「楽しいですよ。素直で可愛くて」

恐る恐る訊いてみると、あっさり即答されてしまった。リリィの言った通りで、悲しくなる。どうせ、私は子供っぽいもん。

「ゴーシュは、………何でもない」

「リーシャ」

言いかけてやめたら、ゴーシュに名前を呼ばれて、後ろから抱きしめられた。

「言ってくれなきゃ分かりませんよ?」

そして、彼は私のうなじにキスを落としていく。その度にぴくりぴくりと体が反応して、声が漏れる。

「ゴーシュは、…私の事を子供っぽいって思う?」

荒い息のまま、私はさっき言わなかった事を訊いた。

「そんな事で悩んでいたんですか?」

そんな事とゴーシュに言われて、むっとする。ゴーシュにとってはそうかもしれないけど、私にしたら立派な悩みなのに。

「そんな事じゃないもん。私の周囲の人、みんな大人っぽいし。ほら、リリィとかアリアさんとか、ゴーシュだって。私だけ子供っぽくて、というより子供みたいな性格だし…。ゴーシュも時々、私の事を子供扱いしてるでしょ?」

私はゴーシュから離れて、彼と向かい合った。

「まあ、確かにリーシャは子供っぽいなと思う事はあります」

「やっぱり…」

あっさりと肯定されて、私は俯いた。やっぱり子供っぽいと思われていたんだ…。

「でも、だからと言って、子供扱いしているわけではありませんよ?」

え?と思わず顔を上げる。ゴーシュはそんな私に軽くキスをした。

「大体、子供相手にはこんな事しません。もちろん、これ以上の事も」

そして、今度は深いキス。気持ちよくて夢中で交わしていたら、すっと離される。何で?と見つめる私に、ゴーシュは優しく微笑んだ。

「リーシャは、何でもない事でも勝手に落ち込むのが悪い癖ですね。もっと自信を持って下さい。子供っぽい所も含めて、リーシャなりの魅力があるんですから」

「私なりの魅力…」

ゴーシュの言葉を聞いて、いつかリリィに言われた言葉を思い出した。

『リーシャはそのままでいいと思うわよ。無理に変わろうとしなくても、充分に素敵な女の子だから、自信持って』

かつて大人っぽい彼女に憧れて、自分もそんな風になりたいと思った。だから、彼女に訊いたのだ。どうしたら、大人っぽくなれるの?って。その答えが、これだった。

ゴーシュもリリィと同じ答え。このままの私がいいと、ありのままの私を受け入れてくれている。大好きで大切な人達がそう言ってくれるのに、何でこんな事で私は悩んでたんだろう?

「ありがとう、ゴーシュ。私はこのままでいいんだよね?」

「当たり前です。僕はリーシャだから好きになったんですよ」

ゴーシュのその言葉に、私は勢いよく抱きついた。そして、満面の笑顔で伝える。

「ゴーシュ、大好き!」

「ありがとうございます、リーシャ。僕も大好きですよ」

悩みも晴れて、抱きしめ返してくれる腕に幸せを堪能する。しかし、その幸せも次のゴーシュの言葉を聞くまでだった。

「それにしても、すっかりいつものリリィに戻ったようですね。よかった」

「…何よ、リリィの事がそんなに心配?」

ゴーシュはほっと安心したように笑うけど、それを見た私はちょっとおもしろくない気分になる。

「ええ。リリィに何かあっては、大いに困りますね。非常に心配です」

「………」

リリィを心配するゴーシュに思う。ねえ、何でそこまで彼女の心配するの?今ここにいる私より、彼女の方が大事なの?

「彼女に何かあると、僕の大事なリーシャが笑わなくなりますから」

悶々とした気持ちでいる私の耳に届いた、ゴーシュの言葉。しっかりと認識して驚く。

今、ゴーシュが僕の大事なリーシャって言ってくれた…。聞き間違いじゃないよね?すごく嬉しいんだけど、どうしよう?

にやける顔を隠すために、私はゴーシュの胸に顔を埋めた。



*****☆*****☆*****
‥‥‥‥。
ゴーシュ・スエードに吹っ掛けられたくだんの裏は、お前か リーシャ・フィゼル‥。
侮れないな‥‥。
だが‥
そのおかげで、リリィがいつものように笑ってくれるようになった。
それには感謝している。
‥‥リリィを頼む。

  from ジギー・ペッパー

Thu.20.Jan.2011
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