素敵なカフェでゴーシュさんと夢のようなひとときを過ごした後−‥
私たちは お喋りをしながら夜想道を歩いた。
ゴーシュさんはリーシャへのプレゼントを、私はゴーシュさんからの素敵な お礼 を抱えて、お互いに見交わしながら笑い合う。
「あ‥やだ。
いつの間にかこんな所まで来ちゃった」
夢見心地の醒めやらぬままだったが故か、気付けば今朝方に待ち合わせをした星屑の噴水を越え、大通りに面した中央広場にまで来てしまっていた。
「‥本当ですね。
僕まで気付きませんでした」
「ふふっ。
お互いに、夢中でしたね。
あのお店の魔法かしら」
「もしかしたら、そうなのかもしれませんね」
ふっと笑う‥私の親友の、恋人。
「今日一日、とても楽しかったですよ。
ありがとうございます、リリィ」
「そんな、こちらこそ‥
とても素敵なひとときを、ありがとうございます。
こんな素敵なプレゼントまでいただいちゃって」
両手から溢れんばかりの大きな花束。
目を閉じ顔に近づけ、その楚々とした豊潤な香りを確かめる。
胸いっぱいに広がる優美な香気−‥
それは私の中の 幸せな気持ち そのものだった。
「‥本当に、なんてお礼を言ったらいいか」
至福に酔ってか 馥郁(ふくいく)に満たされてか、浮かされたような瞳をしているであろうことが自分でも解る。
「‥いいえ。それは僕の気持ちですから。
気にしないでください」
見つめれば、彼は優しい声で返してくれる。
「ゴーシュさん‥‥」
柔らかい微笑みと、温かな気遣いと、素敵すぎるほどのリーシャへの想いと−‥
‥リーシャ、良かったね。
私、リーシャが選んだのがゴーシュさんで本当に嬉しい。
「それじゃ‥私はこれで失礼しますね」
花束が落ちてしまわないように片手でしっかりと胸に抱くと、もう片方の手でワンピースのスカートを押さえて右のつま先を引き、軽く会釈する。
「今日は、本当にありがとうございます」
再度 お礼の言葉を伝えた。
「‥ここで、ですか?
せめて家まで送らせてください」
すかさずの進言。
「え‥そんな。
そこまでお気遣いいただかなくても結構ですよ」
‥緩やかに振られる かぶり。
揺れる 銀髪。
「いいえ。それぐらいはさせてくれませんか?
今日は、僕が誘ったんですから。
最後まで付き合わせてください」
真剣な瞳で切り出され−−‥
「‥‥。
そう言うことなら‥」
甘い微笑の誘惑が降る−‥。
「‥お言葉に、甘えます」
堕ちた娘は 天つ少女(あまつおとめ)か咎人(とがびと)か−‥
「ありがとうございます、ゴーシュさん」
「いえ。では、行きましょうか」
「はい‥♪」
−‥ゴーシュさんに付き添われるその道中も、私の胸の中の暖かさが消え失せることはなかった。
忠愛。相愛。友愛。
‥屋烏(おくう)の、愛。
数多の 愛 が身体中に満ち溢れ、私の爪先から髪の一本までをも潤していく。
ゴーシュさんから知らされた、私に対するジギーの鍾愛が私を甘くとろけさせる。
そして それらから、私の心 が生まれていく。
掛け替えのない 大好きな人たちへの、伝えきれない感謝の気持ちと 慈愛(うつくしみ)を込めた大切な想いで−−‥。
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