そして始まる、三人でのお茶の時間。

最初は和気藹々と何でもない話だったけど、いつの間にか話題は私とゴーシュの恋愛話に移っていた。

「そう言えば、お兄ちゃんとリーシャさんってどうやって出会ったの?」

「僕とリーシャの出会いは、テガミバチの採用試験の監視員と受験者だったんだよ」

シルベットの質問に優しく答えるゴーシュ。やっぱりお兄ちゃんしてるなー。

「そうそう。私が試験を受けてて、宛先にテガミを届けたそのタイミングで、後ろからゴーシュが颯爽と歩いてきたの。で、私に試験終了しましたって声かけてくれたんだけど、その時の笑顔に一目惚れ。かっこよかったなー、あの時のゴーシュ。あ、もちろん今もかっこいいけどね」

「リーシャさん、お兄ちゃんに一目惚れだったんだ」

私が長々と補足すると、シルベットは目をきらきら輝かせている。ふと、ゴーシュを見れば、顔がほんのりと赤い。いいもの見ちゃった。

「ゴーシュ、顔赤いよー」

「ほっといて下さい!」

本人に顔が赤いのを指摘すると、ぷいっと横を向いてしまった。可愛いなー。

「その後どうなったの?」

「それからはがんばってアタックしたよ。振り向いて欲しかったしね。その結果、こうしてお付き合いしているの」

付き合うまでの日々、思い返すといろいろあったなー。泣いたり笑ったり、いろんな事に一喜一憂してたんだよね。懐かしいな。

「そうなんだ。お兄ちゃんはどうだったの?リーシャさんの第一印象」

「あ、それ私も知りたい」

シルベットのナイスな質問に、内心胸をわくわくさせながら、ゴーシュの答えを待つ。

「リーシャを最初に見た時は、女の子なのにテガミバチを目指すなんて珍しいなと思ったぐらいですよ」

「じゃあ、いつ好きになったの?」

それを聞いて、今度は私が質問した。今の話だと、別に好きになったきっかけがあるって事だよね。

「いつと言われましても…。気が付いたら、目が離せなくなっていたんですよ。リーシャが危なっかしくて」

「私、そんなに危なっかしくないもん」

とりあえず、言われた言葉には反論しておく。私はそこまで危なっかしくないんだから。でも、気が付いたら、目が離せなくなっていたかー。なんか、嬉しいかも。

「危なっかしくない人が、ビフレストから落ちますか?」

「うっ…」

それを言われると、反論できなかった。だって、ビフレストから落ちたのは、確かに私なんだから。

「リーシャさん、そんな事したの?」

あう、シルベットに笑われてしまった。ゴーシュってば、何もあんな話しなくたっていいじゃない。なんか、恥ずかしくて居づらくなってきたし、そろそろ帰ろうかな。

「じゃあ私、そろそろ帰るね」

「もう帰っちゃうの?」

ソファから立ち上がれば、シルベットの寂しそうな声。彼女を見ると、つぶらな瞳がこちらをじっと見つめている。うっ、これじゃとても帰りづらい。

「シルベット、あんまりリーシャを困らせてはいけないよ。また遊びに来てもらえばいいじゃないか」

はっきり帰ると言えなくて困っている私に、助け船を出してくれたのはゴーシュだった。

「それもそうね。リーシャさん、また遊びに来てくれる?」

「もちろん。また休みの日にお邪魔させていただくね」

シルベットにまた遊びに行くと約束して、私は問題なく帰る事ができそうだ。あんな可愛い子に帰らないでなんて言われたら、誰だって帰れなくなるに決まってる。

「リーシャ、送っていきますよ」

身支度を整えていざ帰ろうとしたら、ゴーシュから声をかけられた。その申し出は嬉しいけど…。

「私なら大丈夫だよ。ゴーシュこそ、シルベットといなくていいの?」

「リーシャさんに何かあると、私も心配だから、お兄ちゃんに送ってもらって?」

「ほら、シルベットもこう言ってますしね?」

「じゃあ、お願いするね」

にっこりと笑って遠慮したら、ゴーシュとシルベットの二人に押し切られてしまった。なかなかに息がぴったりな兄妹だ。



帰り道、私達は腕を組んで歩いていた。行く時はあんなに不安だったのが嘘みたい。

「いい子だね、シルベット」

「当たり前ですよ、僕の妹ですから」

自慢げなゴーシュの顔から、本当に彼女が好きなんだと伝わってくる。私はどれぐらい彼に好かれているの?

ふと不安がよぎる。その不安を振り払いたくて、私はゴーシュの腕にぎゅっとしがみついた。

「どうかしましたか?」

「ねえ、私の事好き?」

私はゴーシュの問いかけに答えず、彼の気持ちを訊く。シルベットへ愛情を注ぐ姿は、本当に幸せそうだった。家族が大事なのは分かってるけど、それを目の当たりにするとやっぱりつらいよ。

「もちろん、好きですよ」

ゴーシュの答えを聞いて、ひとまず安心する。でも、まだ足りない。もっと…。

「名前、呼んで?」

「リーシャ」

耳に響く愛しい声。顔を見上げれば、優しく微笑んでいるゴーシュがいて、不安が溶かされていく。代わりに湧き上がってくる純粋な恋情。好き、すき、スキ。

「ゴーシュ、大好き」

「僕も大好きですよ」

溢れんばかりの想いを伝えれば、静かに唇が重なった。




初めてのお家訪問

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ヒロイン、シルベットと初顔合わせして仲良くなりました。ついでに、ちょっぴり妬いたりもしてますが。

それにしても、ゴーシュはヒロインの事をどうシルベットに伝えてたんでしょうね。きっと、優しく愛しげな顔してたんだと思います。

2010.09.01 up
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