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託された背番号
笠松は、俺の彼氏。
でも、それ以前に海常高校バスケ部の主将。4番という背番号を背負っているんだ。
そんな笠松も主将になった当初は、今のような姿じゃなかった。言うなれば、不安定、そんな感じだった。
笠松には重荷だったんだ。俺がいえるような事じゃないけど。
その位置は監督からもらったもの。だけどそれは、不満や妬みしか生み出さなかった。
笠松は心が折れる寸前だった。それ程にも思い詰めていたんだ。"こうなった原因は俺にあるから"って。"本当にそこは俺でいいのか。"って。

笠松は部活後も自主練をしていた。一人で、静かに。
俺がそれを知ったのは、たまたま、学校に忘れ物をした時。普段なら、明日でもいいか、なんて考えて、取りに行ったりはしないんだけど、その日はどうしても取りに行かなくてはならないものを忘れてきてしまったんだ。
それは、交換日記。俺と笠松と小堀の3人で回していたもの。
笠松が主将になる、もっと前、笠松のせいで、いや、厳密に言えば笠松だけのせいではないのだけども、上手く連携が取れず、負けてしまった時から始まった、非難、中傷、そして、先にある主将の件によって弱っていた時に、励ましのつもりで始めたんだ。
そういえば、この交換日記、俺と笠松が付き合いだしてからはやってないよなぁ。
なに考えてんだろ、小堀は。って、まぁ、いっか。


…それにしても、ほんと、ユキは変わったなぁ。これも、後輩たちがいるからなのかな。そんなんだったら、俺、妬けちゃうよ。いつか別れる時とかくんのかな。やだなぁ…。
ユキが海常の主将で4番っていう番号を背負ってるのはわかってるけど、それでもさ。
ユキのこと考えたら、俺、ヤなやつだよな。バスケ部から、監督から、俺等から託された背番号を託した一人でもある俺が、捨ててほしい、とか一回でも思っちゃうなんて。軽蔑されるのかなぁ、それは嫌なんだよなぁ。うわ、俺、女々しい。てか、重い。ほんと、やんなっちゃうなぁ…


「森山ー?…ったく、何考えてっか知んねーけどさ、俺のことなんだろ?森山が考えるてるようなのじゃないから、って、言ってんだろ。それと、なんかあるなら、今じゃなくていいから、ちゃんと言えよ…」
う、わ。ほんと、こういうとこユキは聡いよなぁ。
「んー、分かってる」
「聞いてんの、か」
俺のことよく分かってる。けど、ユキ、ごめんね。一人で考えちゃうのは、やっぱり"癖"。だから、気を付ける以外に出来ることはない。けど、ユキと居る時だけは、あまり考えないようにする。
ていうか、それよりも。ユキが俺のことを考えてくれてることが、大切にしてくれてることが、俺の中で一番大きくて。まぁ、つまりは、すごい嬉しいんだ。勿論、今でも女の子は好きだし、可愛い子ウォッチングもしてる。けど、なんでだろうね。一番に出てくるのはどんな事でもユキなんだよ。
…だから、いつも一人で考えてるんだけど。部活だって、勉強だってあるのに、ってさ。
俺もたまにはユキを、って。

「何考えてんのか、知んねぇけど」
「あー…っと、どんな森山でも好きだから」
なにそれ…俺も好きだよ、ユキ。ありがとう、ユキ。

託された背番号
(背番号こそが俺等をつないだもの)
(俺は主将で、4番で、よかった)


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