人が多い。

今年は元旦を部活のメンバーみんなで祝った。
終始不機嫌だった俺は真田にしこたま怒られた。その後謝らせた。
不機嫌にだって理由がある。



「…帰ったらすぐに寝て集合時間にはきちんと来るのだぞ」
「ぴよっ」

空は真っ暗。
お昼の日差しはどこにも溜まらなくてひんやりと冷たい空気に少し滅入った。
まだ12月31日は終わっていない。
あと数分になった頃から同じく二年参りをしようと集まった知らないヤツらが盛り上がりだす。
大師は混んでいた。
カップルやら、男の集団やら、女の集団やら。
いいお子様は寝ているだろうこの時間。
誘ったのは、真田の方だった。

「真田ぁ、」
「なんだ」
「ううん、」

へらり、と笑うと寒さか何かで染まった顔を逸らされた。

2人でのんびりしたかった、っていうのは直接言えなくて。
幸村から「人の気持ちも分からないのかい?」とご指摘を受けたらしい。
行事ごとに疎いから仕方ないと諦めるにはそういうのを気にしてしまう質で。
真田に二年参りを一緒にしないかと言われた時には思わず抱きつくくらいに嬉しかった。
コートのボタンは全部とめて、マフラーをぐるぐる巻きにして、だけど手袋はして来なかった。

「5!」

お詣りの列に並んだままさして喋ったりなんかしなかった。
いつも通りといえばその通り。

「4!」

そういえば除夜の鐘は聞いたっけ。

「3!」

結局煩悩は払えそうにない。

「2!」

アトラクション並みに並んだ列で俺たちの後ろのヤツらはこちらに背を向けて盛り上がっている。

「1!」

そっと真田の方に寄って、手袋をして来なかった手で真田の手を握った。

「0!」

「あけおめじゃ」
「明けましておめでとう」

ぎゅう、とちゃんと握り返されながら今年が始まった。







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