※女体化注意(仁王ちゃんシリーズ)、下品注意
「(あち…)」
未だ残る暑さに汗が浮かんでは流れていく。
少し余裕のあるように買ったブラウスをぱたぱたと引っ張る。汗がひどい。
暗い茶色のセミロングのウィッグを被っているのも正直辛い。
校門に立つ風紀委員やら生徒会やらの面々のせいである。
このくそ暑いの服装点検とはこれ如何に。
男子のきちんと閉められたボタンは苦しそうだし、女子の長いスカートも暑苦しい。
学校全体で温暖化推奨でもするのだろうか。
ふは、と体内に溜まった熱をため息と一緒に出した。
一番先頭で腕組みをしていた真田の横を、軽く会釈をしながら通る。
ちらりともこちらを見ないことから、うまくやり過ごせたようでなにより。
真田の後に並んだ委員たちにも気づかれずに服装点検のスペースを抜、
「待ちたまえ、仁王さん」
ぴっ、と心臓が跳ねる。
じゃけ、コイツもいたんか…。
ゆっくり振り替えれば丁度前の委員たちをうまく交わした腰ぱんの男子が昇降口に向かっていくところだった。あっちにしろよ。
不満のひとつでも言ってやりたかったが、生憎紳士的な笑みで手招き済。
渋々柳生の前に立つ。
「まずはそのウィッグ、回収いたしましょう」
「ちゃんとあとで返しんしゃいよ」
えぇもちろん。
いかんせん信用ならない返事をもらいながら、頭のてっぺんから、足の先まで確認される。
柳生はなにも言ってこない。言えない。
ふん、優等生ルックをしてきたのだ。
文句をつけるところなどあるはずがない!
自信たっぷりに胸をはる。
「おや」
ふと、柳生の指が一番上までしめたブラウスのボタンにかかった。
は、
「下着が少々派手すぎるような気がします」
まだ暑いので薄着の間は透けてしまいますよ。
第一、第二、第三までボタンが開いている。
幸いに他の委員の持ち場からも登校する生徒からも見えにくい場所ではあったが、露出の趣味は一切ない。
柳生の手を払ってブラウスの前を掻き抱く。
酸素を吸うので必死。
ウィッグは没収です、点検期間が終わりましたら取りに来てください、なんていう柳生を睨み付ける。馬鹿か、馬鹿なのか、馬鹿なんだな?
柳生なんて滅べ、そう心のなかで唱えていると、視線に気づいたのか耳元に寄った柳生の口、
「私は清廉な白が好きですね」
とほざく。
額を押して遠ざけながらとにかく逃げた。
(「仁王、顔赤くね?」「は?頭沸いてるんかブタちゃんは」「ブタじゃねぇよ!」)