※二十歳設定。同棲?同居?設定








「はっぴばーすでーとぅーみぃー」

ふぅっと、口を細くして一本だけ火をつけた蝋燭を吹き消した。
途端、細く棚引く煙は臭い。(いつも火災報知機が鳴らないかどうか心配でたまらない。)
しん、とした部屋。

「いてぇな」
「祝いんしゃい」

おめでとうくらい言えよ、と隣のガラの悪いのをど突いた。
何が悲しくて自分で誕生日ケーキを買わねばならないのか。
コンビニ袋もそのままに蝋燭をぶっ挿した姿にフォークを向ける。
こんな時までモンブランを買ってきてしまった自分が恨めしい。
細い蝋燭は真ん中に鎮座していた栗にぶっ挿した。挿した衝撃でケーキが少し歪になってしまったのがなんだか口惜しい。

「ん」
「あ?」

蝋燭をフォーク代わりに、亜久津の目の前にそれを差し出す。
クリームべっとり。トロドロに甘く煮られた栗。
煙をもくもくと出す口元にだんだんと近付けていく。(コイツの煙の方が蝋燭なんかよりも大問題なのでは。)

「やる」
「いらねぇ」
「おこぼれじゃよ」
「もっといらねぇ」

おらおら、と薄い唇に近付けていけば、思いのほかクリームが付いていたのか。
べちゃり、と亜久津の口の端に残骸が付着した。

「あ、」
「…てめぇな」

苦いのと甘いの。
イライラした風に、吸っていたタバコを灰皿に擦り付ける。
大分残っていたソレがグシャグシャと潰されていくのを眺めていれば、ガッと頬を両側から潰す様に掴まれた。
強制的にご対面。

「間抜け面」
「てめぇもな」

凶悪な顔。
付着したクリームは、いたずらっ子がつまみ食いをしたみたいになっていた。
そのギャップが面白くて、にへらと笑うと赤い舌がそれを舐め取って、

「んぅっ」
「 っは、どうだよ」

二十歳の味はよ。

ぽい、と投げ捨てられるように身を離されて、ソファにそのまま埋もれた。
トントン、と亜久津の指が煙草の箱を叩く音がする。
ぼへぇ、と天井を見ながら、手を伸ばして亜久津の服の裾を引いた。

「なんだよ」
「タバコ、頂戴」

ヤニ臭い。
部屋に帰ってきたばかりの俺には、その臭いがやたら鼻につく。
トントンという音も、ライターを摺る音もしない。
その代わりにずい、と天井との間に入ってきた亜久津の顔がゼロ距離で見えた。

「やめとけ」

てめぇには似合わねぇよ。
すぐに離れていったデカい姿を追って上体を起こす。

「タバコ」
「やらねぇ」
「くんしゃい」
「しつけぇ」
「だって」

ぐいぐいと腕を引く。

「お前さんのキス、甘すぎるぜよ」

二十歳の味、知りたいんじゃけど?

「だからタバコ」
「やらねぇよ」
「じゃあ、亜久津が教えてくれりゃあいいんじゃ」
「後から泣き言言っても知らねぇからな」
「早く教えてくれんかのぅ、センパイ」
「もう黙れよ、ガキが」

押しつぶされるようにしてソファにまた沈む。
やっぱり分からない。

亜久津とのキスは、クリームの味がして、煙草の苦さなど微塵も感じないのだ。















2016年仁王くんお誕生日おめでとう!!!!

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