※3周年リク作品(幸村と真田と仁王が/キッチンで/花見をした。)
中学も高校もだらだらしているうちに終わった。
大学なんて通いはじめて、実家を離れて暮らし始めたが、生活に別段のメリハリはない。
「仁王、なにしてるの」
「…プリッ」
対面カウンター用の脚の高い椅子をキッチンに持ち込んで頬杖をつくコイツのせい。あぁ、あと俺と同じようにコイツに唆された(「人聞き悪いのぅ、」)真田のせい。
一人暮らしは寂しいだろ?
なんてもっともくさい台詞に周囲を納得させて、大学生が住むには少し大きい部屋を借りた。ルームシェアと言えば響きはいいか。
本当は、答えなんか出せんよ、とのらりくらりかわす仁王を囲うために真田と組んだだけ。どちらかと言えば、柵に近いと思う。
ちょいちょいと手招きをされるからキッチンの中に入り込む。
相変わらず頬杖をついたまま。
「ソレ、何」
「花見」
ククク、と喉の奥で笑う仁王の視線の先には、ペットボトルに刺さった木の枝。
先には薄ピンクの花がいくつかついていた。
タイミングよく帰ってきた真田におかえり、とだけ声をかけてまた花に視線を戻す。
キッチンに男二人が何もせずに入っているのが不思議だったのか、こちらを覗きながら真田もキッチンに入り込んだ。真田の肩が濡れていた。
そうか、雨か。
「何をしている」
「花見」
仁王の代わりに俺が答えた。
さっきの俺と同じように首をかしげる真田には、答えは教えてやらない。
昨日、酔った仁王が真田の部屋に入り込んでいたのを俺は忘れていない。
この間、中立条約(抜け駆け禁止、という)を結んだばかりだというのに。追い出すとかなんとか、できたはずだ。
話が逸れた。
真田の反応に、フッと笑って仁王を撫でる。
どこか猫のようの目を細めて、気持ち良さそうだった。
髪がいつもよりまとまらないとごちていたのも、キッチンで花見を始めたのも、
「雨が上がったらピクニックにでもいこうか」
全部雨のせいだ。
想定は春です。
大変長らくお待たせいたしました…。