「こうして、こーやってー…、」
「何しとんじゃ」

日曜日の部活は長い。
朝から始まって、夕方までみっちりだ。
いつもはレギュラーみんなで自然と集まってご飯を食べているが、今日は先輩たちがみんな忙しいらしい。
幸村ブチョーは大会の話をしに監督のところへ行ったし、真田副ブチョーも一緒。
柳さんはまだデータがまとめきれないと言って図書館に行った。
丸井先輩は川へ洗濯へ、ジャッカル先輩は山へ芝刈りへ、とか多分そんな感じ。(バレたらめちゃくちゃ怒られそう。)
気づいたら部室には俺一人。
ゲームでもやろうかと思ったが、飯を食いながらはさすがにできない。
いつもは怒られるけれど、携帯を弄りながら飯を食った。

そこで見つけたのだ。
四つのイラストは少し難しくて、見ただけではわからなかった。
飯もそこそこに食い終えて、いそいそと手を動かし始めたのがついさっき。
俺の手元を上から覗き込むように背後に立っていた仁王先輩がいつ部室に入ってきたのかも気づかないくらい集中していたらしい。

うわっ、と変な声を出せば手元が狂った。あーあ、やり直しじゃん。
暗くなりかけた画面を慌てて明るく戻して、もう一度画面を覗き込む。

「何やっとんじゃ」
「えーと、ですねぇ…」

一つ目の画像の形はすぐできる。覚えてしまったくらいだ。
二つ目もまぁなんとか。
問題は三つ目だ。
ぐっ、と内側に両方の手を寄せるようにスライドさせる。
あ、

「狐の窓って云うらしいッス」
「狐…?」

ツイッターで見ました、ほら。と組み上げた両方の手を先輩の前に突き出した。
右手と左手の人差し指と中指の間に、歪なひし形が出ている。
これを覗くとキツネのヨメイリってのが見えるみたいなんスよね、と言えば、ふぅんと気がないのか気があるのか分からない返事が降ってくる。
あと、あとなんだっけもう一つあったはずだ。
このひし形を覗くと…、

「あと、人型に化けたキツネを見分けられるらしいッス」

辛うじてひょこひょこ動く小指を使って画面を明るくすれば、このひし形の効果は二つ。
嘘か本当かなんて確認する術はないけれど、ひし形を覗くくらいはあの苦労の代償としてもらってもいいだろう。
暇潰しにはもってこいだったから感謝はしている。
両方の手を持ち上げて顔の前に構える、

「あほか」
「いってぇ!」

前に脳天に仁王先輩の手刀が落ちた。この人思いっきりやりやがった!
いきなりの衝撃にギッと睨みあげる。

「何するんスか!」
「ただの迷信を信じとる阿呆の目を醒まさせてやろうって言う、センパイの優しさ」

仁王先輩はケラケラと笑って背を向けた。
部活始まるまであと15分じゃよ、それだけ残して先輩はノブに手をかけた。
がっちり組まれた手は手刀の衝撃にも耐え抜いたらしい。
迷信ね、もちろんそんなのは分かっている。
そうっ、と仁王先輩の背中を真ん中に置いてひし形を掲げた。

扉の向こうに消える姿に銀色の耳と尻尾が見えたのは気のせいだったのかもしれない。









切原くんはツイッターで色々ネタを仕入れて遊びそうだなと。

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