後輩って損だと思う。
一年遅く入っただけでやるコト全部違ってくるし、先輩にパシられるし、からかわれるし。

「どうせ、赤也じゃろ」

なにかあるとすぐに疑われる。

今だって現に、水浸しの仁王先輩が目の前に立っている。どうせってなんだ、どうせって。
先輩の肩越しに見える丸井先輩をちょろっとでも振り返ってみればいい。
すんごい顔して笑い耐えてるよ、あの人。

「違いますって」
「嘘吐くんじゃなか」
「俺、今戻ってきたばっかじゃないですか」
「休憩中にでも仕掛けたんじゃろ」
「コートから離れてないのにどうやって仕掛けるんスか!」

なんなんだよ!
頭にかけていたタオルを机に叩きつけたらタイミングよく入ってきた柳生先輩に思いきり注意された。ついてない!



いっつもこうだ。
一週間前に真田副ブチョーにイタヅラを怒られた時だって、
一昨日先輩の鞄のチャックが逆向きになってた時だって、
今朝自販機で仁王先輩のお気に入りが売り切れてた時だって、
何故か俺がコツンと頭を小突かれるのだ。



後から入ってきたはずの柳生先輩が、お先に、なんて帰っていく背中を目で追いながら考えていれば、またコツンと頭に衝撃。

「なんなんスか!」
「なんじゃその態度は」
「俺はやってないって言ってるじゃないですか!」
「信じられる訳なかろ」
「あーもう、なんなんスか、毎回毎回!俺のコト好きなんスか!」

やってらんねー!
副ブチョーがいたらビンタものだけど気にしてられない。なんで俺ばっかり!
睨まれてばっかりなのも悔しいから、言うだけ言って、グッと仁王先輩を睨みあげた。
少しだけ高い(すぐに抜くけど。)身長のせいで見上げる形なのは、間抜けっぽい。
目の端で今度こそ腹を抱えて笑い始めた赤い頭の人を捉えた。このやろう。
ぱちくり、そんな音がしそうなくらいはっきりした瞬き。

「好きじゃよ」
「…は、」

あ、眼キレーな色してる。とか、呑気なコトを言っている場合じゃないようだ。
顎が落ちたみたいに口が開いた。
床を転がる勢いだった丸井先輩の動きもぴたりと止まっていた。

「気付いてたんか」
「え、いやちょっとま…、」

コツン、と骨張った指が今度は額を打つ。
さっきまでのコツンよりもちょっとだけ優しい気がする。
予想外の答えに頭がついていかない。
目の前の仁王先輩を見るとドキドキしてきた。

しっかりしろ俺、仁王先輩は男だぞ、いじめっこだぞ、でも色は白いし、線も細い、コレはもしや俺のモテ期到来いやいやいやいや先輩は男だっつーの!

「後生大事にしてくんしゃい」
「あ、はい」

俺はバカか。












やまなしおちなしいみなし

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