※特殊設定















部活にいくと、どっと疲れる。
もちろんコートの中(たまに外)を走り回っている訳だから、体力的には当然キツイ。
だが、それだけじゃあない。





「随分と疲れているな」
「プリ…ッ」

汗を流す気力もなくなるほどの疲弊は、主にアイツらのせい。
幸村や柳は隙あらば行動を起こすし、赤也にはまだなにも許してやっていないせいでやたら付きまとわれる。(それだけならまだしも、やいやいと文句を言われ続けるのは疲れるのだ。)
今日はそんなヤツらが入れ替わり立ち代わりやってきてはちょっかいをかけてくるものだから、いつもの3倍くらいは疲れがたまった。
自主練自主練、と、アイツらよりも遅くまでコートに残ったのも原因だろうか。
あわよくばアイツらが帰ったあとに戻りたいと思ったのも、いけなかったのかもしれない。
パイプ椅子に座って机に張り付くと、重力に負けるように体が動かなくなった。
視線だけ動かして時計を見ると完全下校まであと30分。シャワーを浴びなければ…。
あぁでも15分は眠りたい。

「汗を流してこい」
「プリッ」

重力に負ける。机と友達だ。
真田が残っていたのは想定外だった。
早く帰りんしゃい、とあまりはれない声で告げると、淡々とそれだけ返ってきた。

「仁王、」
「15分。15分したら着替えるから… 」

重くなる瞼には勝てない。
ずるずると落ちていく意識に抗おうともせずに眠りに、

「汗くらい流せ」

ぐん、と肩を支えられるようにして立ち上がらされた。
ぎょっとして目を剥くも、シャワー室へ引き摺られるように連れていかれる。

「真田、いい。疲れてるからこのまま帰る」

そういうも、無言で真田はシャワーのコックを捻った。
少し熱いくらいのお湯を頭から被って一瞬で意識が覚醒する。
まだ少しふらつくけれどなんとか自分の足で体を支えた。
ここまで来ればあとはなんとかなりそうだ。
さっさと汗を流して家に帰って寝てしまおう。
しかし、

「濡れとるよ」
「構わん」

俺を連れてきたこの男は一体どうするのだろうか。
幸い二人ともユニフォームだったのが唯一の救いだ。(これが制服だったらとんでもないコトになっていた。)
ひとつのシャワーでびしゃびしゃに濡れて、このままじゃあ真田だって帰れない。
とんとん、と肩を叩いて、もう俺は大丈夫だから。と言うも、一層コックを強く捻って強い水圧の中に俺を押し込んだ。
髪だの、体だの、そこら中の汗が流れていく。
少しだけ水圧が弱まる。
真田を見やれば、丁度出ていくところだった。

「真田、」
「拭くものを取ってくる」
「何でそこまでしてくれるん」
「…」

ぴちゃんぴちゃん、と真田の髪からも水滴が落ちた。
気づかないはずがない。汗くさくない体は、すでに一度シャワーを浴びているに違いないのだ。
なのにユニフォームまで着て、世話を焼く。
不思議な男だ。
弱い雨のような勢いのシャワーを被りながら真田、ともう一度名前を呼ぶ。

「さな、」
「っ、お前をそのまま帰せる訳がないだろう!」

早く汗を流せ!
それだけいうと、床がびしょびしょになるのも気にせずに真田はロッカー室の方へと消えた。
しばらくして、自分の肩口に鼻を寄せてみた。
どろどろにかいた汗は、もちろん甘い匂い(なんだと思う)。
赤也や幸村、柳ではないが、この匂いに人は振り向くらしい。
誰が置いたとも知らないせっけんの香りのするボディソープを3回プッシュして体に擦り付けた。
















汗も桃の匂いらしい。

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