※気持ちのよくない言葉(悪態)が多用されています。




























「死ねよ」

仁王と俺しかいない部室で、ぽつりと呟いた。
荷物をまとめていた手が一瞬だけ止まっていたが、すぐに何事もなかったように同じ動作を開始する。
もう一度、今度はその背中に向かって言ってみた。
渋々といった様子でこちらを振り向く仁王は、まさにそのまま、呆れ顔。

「死ななきゃならん意味がわからん」

朝練も遅刻しなかったし、授業だってさぼらんかった、今日はネコだって連れ込んでないし、部活だってしっかりやったじゃろ、

ふぅ、とため息を吐きながら、仁王は自分に非はないとでも言いたげだった。
だけど、そんなコトは関係ない。

「好きなんだろ?」

「は、」

呆れて半分になっていた目が、じわりじわりと開いていき、とうとう真ん丸になった。
お前は頭が悪いね、と悪態を吐く。
リフジン?知ったこっちゃない。

「好きなんだろ、俺のコト」
「そ、れとこれとなんの関係があ、」
「俺はお前がキライだよ」

なに考えてるか分からないし、すぐどこかに消える、しゃべり方だって謎だし、なによりも俺を好きとかありえない。

「だから、死ねよ」

はっきりと言い放つ。
いつの間にか項垂れている仁王の顔は見えない。
輪郭を捉えて、無理矢理に顔をあげさせれば、何故か仁王は泣きそうな顔をして、笑っていた。

「死にたくは、ないのぅ」

キライでも構わんよ。だけど、まだ幸村のいる世界にいさせて。
ツゥ、と落ちた涙に、何泣いてるの、と思わず悪態を吐いた。




















可哀想な仁王

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