※特殊設定(のはずだが、普通に読むコトもできそう)、ちゅー注意








人が多いのは苦手だ。
ぶつかる肩を避けるのも面倒だし、空気も淀む。
何より、すれ違ったあとに不思議げに振り向かれるのはキライだった。





「起きろ、仁王」





緩い力で揺り動かされて瞼を上げた。
ぼんやりとしている間に机に突っ伏して眠ってしまっていたらしい。
今日の部活はきつかった。
視線だけで上を向けば、どうやら起こしてくれたのは柳のようだ。
そういえば今日の鍵当番は柳だったか。
うまく動かない口を少しだけ広げて、すまん、と声にした。(したつもりだ。)
起きなければ、と、伸びをしようと腕を持ち上げればぎしぎしと軋むからやめた。
あげたはずの瞼も驚くほど重い。
すまん、のあとにつくはずだった今起きる、をあと5分に変更。
かろうじて開いていた瞼をすとんと落とせば、金縛りのように眠気で動けなくなる。あと少しだけ、そう言い聞かせて意識を手放す。

「仁王」

遠くで柳の声が聞こえる。
すまんな、と心の中で謝れば許される気がして、ぴくりとも体を動かさなかった。



よくあるだろう。夢はの中で落下したり、強い力で引っ張られたり、そんな感覚。
それだと思った、一瞬だけ。

「んぅ…、っ」

勘違いだと分かったのは、その力が強すぎたからだ。
夢に片足を突っ込んでいたせいで覚醒しきらない頭。
それでも、細く開いた瞼の間に見えた柳の顔と、息苦しさは理解した。



啄むようなかわいいものではない。
だんだんと酸素が足りなくなってくると、限界だと感じていた眠気も吹っ飛んだ。
寝起きと、それで立たなくなった腰の代わりに必死で柳の制服につかまる。
舌をねぶられるような、すべて食われてしまうような、怖いくらい強い口付けだ。





追い付かない呼吸のせいか、眠気とは違う意識の向こうが見え始めた瞬間にようやく押さえつけられていた手が離れた。
柳の体に沿ってずるずると床まで崩れ落ちる。
頭がくらくらする。
はーはー、と呼吸を繰り返す俺に合わせるように柳は膝をついた。
長い指で輪郭を捕らえられて、視線を交える。
キスはもうごめんじゃ、睨み付けながらそういうのに、何故か近寄ってくる柳に体を捩って抵抗した。(ああもう。こいつらといるといくら体力があっても足りん。)



あと数センチ。

ぴたりと、距離を詰めるのを止めると、しばらく沈黙が続いた。
ようやく整ってきた呼吸と、やめろと口にするのと、柳が一気に数センチを詰めて唇を一舐めしたのはすべて同時だった。
ひっぱたこうとした手は、予想だか確率だかなんだか知らないが、しっかりと押さえつけられていて動かない。

「本当に、どこもかしこも甘美だな」

くすくすと笑うように紡がれた言葉に、唯一自由な口で反論する。

「嬉しい、とでも言うと思っとるんか」

ヘドが出る、


















不機嫌仁王。本気でキライな訳じゃない。

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