ちょっとうとうとしただけのはずだった。

「…っ、」
「お似合いですよ、仁王くん」
「こんの…っ、スキモノ」

はっ、と我に返った時にはこの様だ。
自分のものじゃないくらいに動かない腕は、ちらりと見やった背中側で綺麗に拘束されていた。ただ縛るだけじゃ、ない。
たまにAVとかで見るやつだ。

綺麗に編み上げられたみたいなそれを、この紳士面した男は何処で習得したのか。
食えないヤツ、心の中で悪態をついた。
床に転がされて、後ろ手で拘束。
唯一使える足をばたつかせて立ち上がろうとするも、芋虫よろしくただそこを這い動くくらいしかできない。

「おい柳生。そろそろいいじゃろ」
「何がです?」
「コレ」

うつ伏せのまま顔だけ柳生を見て、上がらない、動かない腕に視線をくれてやる。
あぁ、と納得したような声はしたものの、一向にこちらに来る気配も、ロープをほどく気配もない。

「美しいですよ」
「は、」
「まるで芸術品のようです」

嬉しげにそう言ってのける様に言葉をなくす。
からかったいるのだろうか、そんな素振りは見えないが。(食えないヤツではあるが。)

「捕って食おうなんて考えていません」

ただそうしているだけで美しいです。
恍惚とした表情に、声。
ぶるり、とひとつ身震いをしてから変態、と小声で悪態をついた。














緊縛仁王雅治〜後手一本縛 甲

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