※ちゅーい(ちゅー注意)












呼び掛けた声に振り返った仁王の肩をどん、と押せばそのまま床に仰向けで倒れた。
頭でも打ったのか、体を丸めて頭を押さえている。
腹を跨いで膝立ちのまま仁王を見下ろした。

「なにすんじゃ、このアホ」
「いや、別に」
「別にじゃな、」

抱えていた頭から手を離して顔をあげた仁王がぴたりと固まった。
俺が仁王の上にいたコトに気付いていなかったらしい。
鳩が豆鉄砲食らったみたいな顔。うける。
ぐっ、と顔を突き合わせるようにして近づければ肩を押さえられた。

「近い」
「近くしてんだよ」
「離れんしゃい」
「嫌だね」

筋肉があるとはいえ、上からの重みになんて耐えきれない。
徐々に近くなる顔と顔。
床と親戚なのかってくらいにべったりと体を張り付けて、なるべく俺から遠ざかろうとするけど、明らかに無駄。逃げ場なんてない。
鼻先と鼻先がぶつかった。

「そんな睨むなよ」
「…誰がそうさせてると思っとる」
「俺?」

眉間に寄った皺も、嫌悪感丸出しの細められた目も、好意の印じゃないコトはわかる。

SNSで見た気がする。
男のテリトリーは前方に広い。
真正面に陣取ってる俺は、仁王のテリトリーに土足で上がり込んでる訳だ。
そう睨むなって。もう一度言うも、早く離れろとしか言わない。

「なぁ、今気分どう?」
「わざわざ聞く必要があるんか」
「あー、最低?」
「それ以外に何がある」

そのまま唾でも吐きそうな仁王をじっと見つめる。

仁王のテリトリーを侵してやった。

だけど、同時に俺のテリトリーも侵されてるはずなのに。嫌じゃあない。
むしろ、心のどこかで喜んでいる気さえする。
がぶり、と触れそうで触れなかった唇に噛みついた。
ぶわぁ、と体に広がる熱。
それから、一度大きく開かれた仁王の目が細められて、下唇に走る痛み。
ぱっ、と距離を取って唇に触れれば、赤い血。
少し離れたのをいいコトに仁王は俺をどかせるコトに成功した。十分に距離を取られる。

「いってぇじゃん」
「自業自得じゃろ」

踵を返して去っていく仁王の背中を見つめる。
テリトリーを侵すのは、嫌悪からか、それとも許容からか。

























ヤンキーのメンチ切り(?)は嫌悪から?許した相手ならテリトリーの侵入もあり?

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