甘いものは好かん。

そう言いながら、やっぱり雰囲気に飲まれるだけのコトはある。
焼きそば食って、焼き鳥食って。
それだけ食べたのに、どうしても不健康な真っ青な色に惹かれて財布を開いていた。




隣の屋台でりんご飴を買う手塚を待ち、人のいない階段に腰かけた。
すでに水になりかけているそれを掬って一口、二口。
結局、ブルーハワイってなに味なんだろうか。
わからないけれど、この甘ったるい味も夏の風物詩だと思えばなんとなしに旨かった。
手塚も買ってきたりんご飴に食らいついている。
小振りとは言え、丸々したそれは食べづらそうである。
他の屋台よりも大きめな容器に入れられたブルーハワイも、早くしなければ溶けてしまうだろう。
会話は一切ない。
無心で手元の甘味を食った。



きぃん、と痛む米神を押さえながら空になった容器を階段に置いた。
手が冷たい。夕方の暑さもこれで吹っ飛んでくれればいいのに。
冷えたのは内蔵だけで、汗はまだまだ出るようだった。
急いで食べたからか、隣ではまだりんご飴を頬張っていた。
じっ、とその光景を見つめていれば、眼鏡を通さない視線が、隙間から流れてきた。

「食べるか?」
「…いいんか」
「あぁ」

別に腹が減ってるだとか、甘いものが好きだとかそんなのではない。
隣の芝生は青く見える、そんな感じ。
棒に刺さった飴を受けとって口許に近づける。
あ、

「すまん。交換できるもん、もうない」

自分のかき氷はすっかり食べ終わってしまったコトに今さら気づいた。
財布を開いて買ったものではないからか、まだかじりついていない目の前のりんご飴がなんだか手を出してはいけないようなものに感じた。
ちらりと手塚を見れば、こちらを見るばかり。
…いいか。大きく口を開いてりんご飴にかじりつこうとした。
が、

「っ!」

なぜか横から伸びてきた手にそれを阻まれた。
かと思うと、顎を掴まれ舌が絡むキス。

米神に走った痛みなんか比にならないほど頭の中がくらくらした。

うっすらと開く手塚の目とは視線を合わせたくなくて、目を閉じる。

ねぶられるように舌を擦り合わせて。

ガヤガヤとやかましいはずの遠くの音も聞こえなくなるくらい。

どのくらいだったかは、分からない。
解放された時には息があがっていた。

「な、にすんじゃ…」

ぜぇぜぇと肩を揺らしながら手塚を睨む。
なんともない顔が、涼しげな顔が憎い。
眼鏡の向こうからこちらを見やりながら、ぺろり、と唇を舌が走った。

「一口、もらったまでだ」

あのブルーハワイのなんとも言えない味が。舌に染み付くみたいにこびりついた色が。
今手塚が舐めた唇に付いてしまったのかと思うと、恥ずかしくて恥ずかしくて、りんご飴にかじりつくコトしかできなかった。
















夏祭り2014

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