へろへろな体を引き摺りながら帰り道。
同じように夏休みに入ったであろう小学生たちが元気よく隣を駆け抜けていった。

…その元気、ちぃとくれんか。

そう心の中で一人ごちながら足を引き摺ると、またやかましいぐらい元気な小学生に追い抜かれた。
時間は夕方。きゃいきゃいと騒ぐのもいいが、暗くなると危ないと親に言われていないのだろうか。
無防備じゃな、と思っていたが、原因はすぐに分かった。

さほどでかくもないその空間に、ところ狭しと露店が並んでいる。
夏祭りだ。
くん、とソースのいい匂いが鼻をついて、練習後の空っぽな腹がキュウと音を立てた。
今日の夕飯はなんだっけ、まぁ少しくらい食べたって余裕で入るだろう。
その香りに釣られるように階段を上った。





「あ、」
「おう、仁王じゃねぇか」

上りきった先には、見覚えのある黒い姿。
着ているのは俺と同じ。立海の制服のままだ。
今日は、丸井に連れられて先に帰ったはずだったが。

「なんで、おる」
「ブン太に頼まれたんだよ」

ふぅ、と吐き出される息。
話を聞けば、勉強を教えに行ったはずが、夏祭りに行きたいというチビたちのお守りをするコトになって来てしまったのだという。
ちなみに当人丸井は家で課題を必死でこなしているらしい。
視線を巡らせるが、丸井家のちびたちの姿はない。
きっと、あの人だかりの中ではしゃいでいるんだろう。ふと、露店の方に目をやれば、先ほどの空腹が戻ってきた。なにか食おうか。
財布の中身を思い出していると、目の前にずい、となにかが差し出された。

「…ぴよ」
「仁王も飲むか?」

薄い水色の瓶が揺れて、中のビー玉がカラコロ鳴る。ラムネだ。
少し減ったそれは、空きっ腹には優しくはない。
でも、

「いただくぜよ」

それを受け取って、一口。
しゅわしゅわとした刺激が喉を駆け降りていくのが分かる。
普通の顔で返せただろうか。
いつもは気にするはずもない、回し飲みも何故か今日はどきどきした。
きっと、夏のせい。
空腹はいつの間にか忘れていた。















夏祭り2014

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