※暗いのが病的に嫌いな仁王くんシリーズ(にしました。)
空は藍色だけれど、ぱっと見た限りでは部屋は真っ暗だった。
「無事か」
「ア、ホなんじゃな」
無事な訳なかろうが。
仁王が病的に暗闇を嫌がるのは以前から知っていた。
いきなり電話で呼び出されて家に向かってみれば不用心に鍵の空いた扉のすぐ内側に仁王がしゃがみこんでいた。
急いでいたからか、全く見えていなかった景色はどこにも光がともっていなかった。
そういえば来る途中で何台か緊急車両がサイレンを鳴らしながら走っていたような気がする。
電線でも切れたのだろう。
ここら一帯が停電しているようだ。
「携帯…、」
「なんだ?」
「充電…」
しんだ。
ぱたりと言う効果音が似合うくらいに見事に崩れた仁王をなんとかリビングまで連れていった。
抱えあげた時の嫌な心臓の鳴り方と、妙な息遣いはきっと恐怖心からなのだろう。
どうしてやればよいのだろうか。
手が行き着く先を見出だせずに宙をさまよった。
「さな、だ…、助けては、くれないんか…?」
弱々しいその声にどうすればいいか答えが出ないまま仁王を抱き締めた。
「どう、お前を助けてやればいいか。俺には検討がつかぬのだ」
両腕にしっかりと力を入れて抱き締めたその体は微かに震えているようだった。
「これで、いい…んじゃよ」
こうしていてくんしゃい。
今度は仁王の腕が背中に回ったのが分かった。
真田:精一杯抱き締める。