学校をこっそり抜けだして、はるばる東京まで。
俺って健気。
「部活はどうした」
「…」
「聞いているのか」
「…」
「答えろ」
「…ぴぃ」
そんな健気を買ってくれたっていいじゃろ。
手塚の背中に張り付きながら心の中でぶうたれた。
幸村からも真田からも、柳生からもお叱りのメールは来ない。
平日ど真ん中で部活に励まない日があるわけない。
だけど、こんな日くらいは誰もが優しい訳だ。
「部活に行け」
コイツを除いて。
気づいてない。きっと俺が誕生日だって気づいてない。
ぐりぐりと頭を擦り付けて抵抗。帰る気なんてさらさらありまセン。
あまりにもいつもの俺と違うのがわかったのか、線の細い手が頭を撫でた。
「なにかあったのか」
「…なんも」
気持ちのよさに目を細める。
傷みきった俺の髪は残念ながらさわり心地がよくないはずである。
だから、あまり頭を撫でられるのは得意ではない。
でも、今日くらいは、
「傍にいさしてくんしゃいよ」
独り占めさせてくれよ。
仁王くんが自分から会いに行ってひっついてる。仁王くんの誕生日を知らないに一票。