「(げ、)」
会いたくないヤツに会ってしまった。
ふらふらと遊び回っていた自分を叱責。
逃げようにも、目が合ったからきっと無理。
変わらずふらふらと歩くと、案の定、
「やぁ、仁王」
「ぷり」
偶然を装って声をかけられた。
嘘つき。俺なんかよりも質が悪い。
善人面した悪魔だコイツ!(あとでこってり絞られそうだと思いながら心の中だけでそう溢した。)
それよりも、だ、
「なんでこっちにおるんじゃ」
青学は東京じゃろ。
神奈川に用なんてないはずなのに。
「なんでだと思う?」
ふふふ、なんて。上品なこって。
中性的な顔にぴったりな笑い方をする、本当に。
どうにもコイツは苦手で仕方ない。
心のうちを見透かされてる気がして嫌だ。
「…なんでも構わん、けど」
変な汗をかく。
制服のポケットに突っ込んだ手がじんわり湿って気持ち悪い。
早くその場から去りたくて、一歩後ろに下が、
「なんでだと思う?」
「…、ぴよっ!」
不意に腕を捕まれて、身動きが取れなくなる。
突然のコトで心臓が跳ねた。
だばだばだばだば、例えるならそんな感じで手汗増量。
半身だけなんとかひきはがしながら、なんでもない顔をする。
多分、できてない。
「知らんぜよ。そんなん」
「答えてよ」
「し、知らんて」
コイツ、なに考えてるか分からん。
妙な居心地の悪さに強制的に身を置き続ける。
なにこれ、苦行か。
あぁどうもコート上の詐欺師ですどうも。
どうやらコートからでると苦手な相手が鬼門です。
長い時間うろついていたからか、立海生はどこにもいない。
こんな時こそ誰かいろよと暴言を吐く。どうしようもない。
変な緊張が伝わったのか、ふふふ、と綺麗に笑って不二はその手を離した。
「怖がらなくても大丈夫だよ」
「…じゃあ、怖がらせるようなコトしなさんな」
「ごめんごめん。まぁ、今日は、」
くっ、とネクタイを引かれてよろめく。
「君に会いに来ただけなんだ」
綺麗な青い目に、きゅんとするよりも背筋が粟立った。
祝ってない気がしてならない。
苦手意識満載の仁王をいじる不二。誕生日も調べ尽くしてびびらせる。