教官室に部室の鍵を取りに行くと、すでにそこに鍵はなく、誰かが持っていった後だった。
柳か、柳生か、はたまた幸村が花の世話をするために早くに来たのだろうか。





案の定鍵の開いている部室のドアを捻った。

「おはようさん」
「…仁王?」
「なんじゃ、真田」

狐のように細く笑って、また仁王は、おはようさん、と同じ言葉を繰り返した。おはよう、と声を出す。
全く予想だにしない場面に出くわした。
まさか仁王が一番にいるとは、想像もしていなかったのだ。
朝練に遅刻してくるような仁王が、だ。
思わず戸惑ったコトも理解してもらえるのではないだろうか。

「のぅ、真田」
「なんだ」
「今日、なんの日か知っとる?」
「今日?」

よくよく見やれば、この男、まだ制服である。
ミーティングで使うパイプ椅子に膝を抱えて座っている。
鞄を床に置いてから仁王に向く。

「今日はなにかあるのか?」
「俺な、幸村から今日の部活は出るなって言われたんじゃ」
「なんだと?」
「今日俺が外に出たら、大変なコトになるって」
「どういう意味だ」
「なぁ、真田。今日、なんの日か知っとるか?」

うすら笑いのまま、膝の上に組んだ腕
乗せて、その上に頭を乗せて。
少し仁王は楽しそうだった。
チクチクと時計の秒針が動く音がする。静寂。
それを破ったのは、

「ぶっぶー。時間切れじゃ」

パイプが床に擦れる音。
はっと気づくと、仁王が目の前にいた。
うっすらと弧を描く唇が開く。

「今日はな、」

今日は、

「俺の、」

仁王の、

「たんじょーび」

誕生日。

すべての単語を繋ぎ合わせて、カレンダーを見る。
12月4日。

「これで真田のコトをおっさんってからかえなくなってしまうのぅ」

嘘泣きにもなっていない。
隠しきれない口許が見える。

「女子に見つかりとうなかったんじゃ」

幸村が配慮してくれて助かったぜよ。
けらけらと仁王が笑う。
制服姿のままいたのはそういう理由があったからなのか。
納得していると、ふ、と仁王が視線を向けてきた。

「本当は朝練だって来ないでよかったんじゃって」

でも俺はここにいる。
それはな、


「誰かさんに会いたかったからじゃよ」


くすくす、と笑う仁王の声がくすぐったかった。

「…誕生日、おめでとう」
「ありがとさん」











部活サプライズ企画してないと、多分忘れてる。

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