※表「男娼跡部と男娼仁王」の長編版、アブノーマル注意






初めて大切な大切なカメラを落としそうになった。
浮気現場とかこれ如何に。
旦那を調査してくれと言ってきた豊満なたるんだバストが素敵でもなんでもないマダムの依頼。
年甲斐もなくひけらかす胸がはりつや良ければなんて浅い考えはあっと言う間に吹っ飛んで行った。
部屋に入ってきたのは華奢なロリっ子でも、巨乳な美女でもなく、

「  、」

白い肌が綺麗な男。
肩に引っ掛けるように着ていた服が落ちたと同時にマダムの旦那が突進していくのがカメラ越しに見えた。
声は聞こえないし、望遠だからか視界は揺れる。

だけど、

シーツの上で広がる髪だとか、
くっと結ばれた口だとか、
揺さぶられても剛直な筋肉だとか、
端から見てるのに色気しかない目元だとか、

綺麗すぎる。

エロ本を読む中学生が如く、食い入るようにその行為を見つめた。
さっきまで結ばれていた唇が開いたかと思えば、無駄なものがない体が弓なった。
マダムの旦那がソイツの上に倒れ込む、と同時に、

「っ!」

見えていないはずの俺の方に視線がやってきた。
ジュクリ、と体の芯が疼い、た。

アツイ、アツイアツイ、

逃げるようにそこから離れる。
頭の中でさっきのヤツと俺が絡み合う。
別にそっちの趣味があるわけじゃない。
そりゃあ健全な 男の子として色々。

だけど、凍るくらいに綺麗な目を見て、

「ズル、い」

ズボンの上から膨れ上がったそこを触ると、体中に恐ろしい電流が流れる。

アイツは、ネコじゃない。
妄想の中で、アイツはどう見てもタチ。
その下であへあへと喘いでいるのが、

俺だった。







●○●


ヤツの情報は簡単に割れた。
マダムの旦那に写真を見せればあっという間。
ライターで写真を燃やしてやりながら、マダムのヒステリックに会う旦那に同情。
つくづく馬鹿な夫婦。






「あ、」

馬鹿は俺だったと後悔するのは、旦那が逃げ帰ってすぐに後。
男娼なんて高級料亭と同じもんだ。
要は、「一見様お断り」ってコトで。
近づこうにもその手段を失ってしまった訳だ。
仕方ない。



久しぶりに私服らしい私服に袖を通す。
何でも屋のバイトを止める覚悟は出来ていた。







●○●



いらついて壁を蹴りつけた。
薄っぺらだとは言っても、それなりに名前の知れたホテルだ。
砕け散るようなコトはない。



最近、店に新人が入ったらしい。
さして気になるコトではなかったはずなのに、あっという間にそれは俺の機嫌を損ねるコトになった。



客は2日ぶりだった。
我先にと俺を指名していたヤツらが全てその新人に流れたのだ。
そこいらの中堅には叶わないくらいの数をこなすが 、いい金蔓を奪いとられていい気はしない。
もう一度壁を蹴り飛ばした。

相手はこの間までズブの素人だったと言うのに。
噂では真っ白な肌に銀色の髪、金の目で、恐ろしい色気の持ち主らしいが。


「俺様の知ったこっちゃねぇ」


脱ぎやすいように着崩した服を確認して如何にも軽そうな扉を叩いた。







●○●



「ぁああ…っ!」

おっさんのちんこが奥を抉った瞬間に穴をひくつかせて俺はイった。
どくっと体の中を液体が遡る感じが、気持ち悪く恐ろしい。
体力もない、精力もない、そんなおっさんのちんこが抜けた。
異物が抜けたアナルが震える。
はぁはぁなんて荒い息。
それにあわせてやるように息を吐けば、気持ちの悪い笑顔が見えた。

「君いいねぇ。新人なんだろ?」
「そうですき」
「なんだってこんなところで働いてるんだい?お金のためかい?」

ずるずると輪郭を這うように進む指は太いし、触り心地がよくない。
くすぐったがるフリをしてその指から逃げる。

「んん…、会いたい先輩がおってのぅ。知っとる?あのミルクティ色の髪で青い目の、」
「あぁ、景吾かい?」

甘えるような声を出せば知らない名前が出てきた。どんぴしゃ。
何回か抱かれてやっているこのおっさん。
どう見たっていいトコ課長止まり。
その癖、こうやって遊びが激しいとなると、きっとNo.1っぽいアイツばかりを指名しているはず。
内心ほくそ笑む。ちょろいちょろい。

可愛いペットを演じてやるから、俺にもっとソイツのコトを教えて。

「ケイゴ?」
「そう。店のNo.1の景吾だ」

こてん、と首を傾げながら問いかければ、にったにったと歯を剥き出しにして笑う。
ぎしり、とスプリングが軋んだ。
あ、

「店の先輩の名前も知らないなんて、ダメな子だ。これは、お仕置きだな」

あーあ、やってしまった。
主目的が金ではない俺には別段この行為に重要性が見いだせない。
時間が長引けば長引くほど料金は嵩むから、もうあっという間に金は溜まった。

気持ちの悪いちんこが目の前にやってきた。
可愛らしくいやいやと首を振れば、案の定。
無理矢理に突っ込まれて腰を振られた。
おえおえ言いながらくわえる姿が快感だとか。
変な性癖。







●○●



「ケイゴ…?」

客を見送って帰ろうとすると後ろから名前を呼ばれた。別の常連か。
愛想笑いを浮かべて、プライド高めにゆったりと振り返れば、

「やっぱり…!」

嬉しそうに笑う若い男。
どう見ても同業者なソイツはぱたぱたとこちらに寄ってきた。
知らないヤツだ。
客じゃあないし、面識のある後輩でも ない。
ただ、

「お前、誰だ」
「仁王、仁王雅治じゃ」

銀色の髪がふわりと揺れた。
金色の目が嬉しそうに半月型に細まる。
口元に小さなほくろが見えた。

人違いではなさそうだ。
今までに出会ったヤツらにはない特徴ばかりなコイツが、俺の客を取った「新人サマ」って訳。

「てめぇか」
「ぴよ?」
「俺様の客を根刮ぎ取りやがって!」
「違う!俺はっ、俺はただ、」

ゆるゆるな服の襟元をひっつかめんで、殴ろうと拳を上げた。
こんなへらへらした野郎に一瞬でも客を取られたかと思うと吐き気がする。
殴られて、客が減ればいい。
店に解雇されればいい。
わたわたと暴れるソイツ目掛けて、腕を振り下ろし、


「ケイゴに会いたかっただけなんじゃ…っ!」


すんでのところで拳が止まった。
俺様に、会いたかった、だと?
疑るようにソイツを、あーなんだと言ったか、そうだそうだ、仁王を、じっと見つめる。
その視線に気づいたのか、少しずつ赤に染まる頬。
そして気付く異変。

「ケイ、ゴ…」
「景吾なんて気安く呼ぶんじゃねぇ。跡部だ」
「、跡部ぇ…」

ずりり、と骨盤に擦り寄せられた熱はすでに剛直なほど勃ち上がっていた。
ぎょっとして仁王を見やれば、熱に浮かされて溶けたような表情。
思わずごくりと喉が鳴った。


「跡、部…、なぁお願いがあるんじゃ」


意識しているのか、無意識なのか、添わされた腰がゆるゆると勝手に動いている。


「一回でいい、」


コイツ、


「俺を抱いてくんしゃい」


真正のネコだ。









●○●



さっきまでいた部屋は今日は俺のもの。
羽振りのいい客に感謝しつつ、仁王を引きずるように放り込んだ。
鍵を閉めてから細い白い手首を引っ張って引き寄せた。
一瞬で縮まった距離。
間髪入れずに唇を重ねた。



目をかっぴらいたままキスをする。
あー怖い、こんな舌使いされたらキスだけでいっちゃいそう。
青い目が綺麗。
夢見た状況に酷似してるそれに、体の芯がぶるりと震える。
なんだか俺ばっかりが攻められるのも癪だから、突き出してきたどこもかしこも綺麗な舌に、欲望塗れな舌をわざと擦り付けた。




少し苦しそうに歪んだ金色の目をじっと見ながらキスをした。息が荒い。
唐突に攻められたからお返しに舌を吸い上げてやったまでだ。
腰が抜けきったそいつを支えながらベッドに押しつけた。
服を剥げば、恐ろしいほど真っ白な体。
思わず大きく喉が鳴った。
妖艶。白のシーツに紛れるはずの銀髪は何故か厭らしく光を受けた。
真っ赤な髪紐が目を惹いた。
自慢のミルクティブラウンの髪 を一度梳く。

俺も、こう、見えているのだろうか。

「あと、べ…?」

掠れた声に食らいつくように覆い被さると、しっかり仕込まれたんだろう。
その細い腕が首に絡まった。
しなだれるような恰好はコイツにお似合い。

「俺様に近づきたかったんだろ?」
「ん、跡部がす、」
「はん、それは体現してもらわなきゃ分かんねぇな」
「体、現…?」

コイツは仕込まれたお似合いの恰好で俺を誘うなら、

「分かってんだろ?、」
「…っ!」

俺も俺のお似合いの恰好で誘うまでだ。
お似合いじゃないか。
厭らしいと厭らしい。
貪れよ、男娼。





「んっ、んむ っふぅ…っ」
「中々いいじゃねぇの」

必死で跡部のちんこに吸いつく。
ネコとしてしか使われないからか、あまり臭くないそれに興奮の坩堝。
下品に音を立てながらしゃぶっていると、唐突に頭を抑えつけられて精液を注がれた。
たっぷり出されたそれを半分ほど飲み込んで。
口に指を突っ込んで跡部の精液を少し取り出す。残りは一気に飲み込んだ。

尻を跡部に見えるように高くしながらアナルに濡れた指を射し込んでいく。
見て、見てくんしゃい跡部。
両方の人差し指を入れて、くっぱりとアナルを広げてみせる。
少しだけ外気に晒された入り口に体がびくんと震えた。

「跡部、も…いれて…?」

肩越しに跡部を見やる。
ぞくり、と背が粟立つ。
これだ、これが俺があの時夢心地にみた、


「あーん?もっとその気にさせてみろよ」


跡部景吾。
にたりと歪んだ口元に楽しそうな青い目。
1つあるほくろが色気を増長させる。
じゅくり、と体の中心がさらに疼いた。

くっ、と力を入れてアナルを広げる。
見せつけるようにゆらゆらと腰を振る。

だけど跡部は薄く笑ったまま何もしてくれない。
ダメ、もう、限界。


「跡部のっ、ぶっといおちんこ…っ、きつきつにっ、アナルにぶっ挿してぇええ!」


みちみち、なんて音が聞こえたかと思うほどの衝撃。
アナルを開く両方の指の間を跡部のちんこが貫いたのだ。
すぐに指は抜かれたが、あまりの衝撃に歯がカタカタと鳴る。
おっさんなんて比べものにならない。
呼吸をするのも辛いほど太くて長い。
びっちり入りこんだソレを、もっと奥にもっと深く、とうねるのが俺。

始まった律動になすがまま。
想像の通り。素晴らしい。
射精の快感と共に意識が飛んだ。








●○●





「はぁっ、はぁっ」

静かになった部屋では、俺の息づく音がやたらに響いた。
目の前で倒れるように眠る仁王。
まさか、


「まさか、な…」


どんな客と寝た時よりも、
どんな客に貢がれた時よりも、
一番の快感があったなんてきっと嘘。
どんな客よりも相性がよいと感じたのもきっと嘘。
この下品な性の匂いに頭が麻痺していただけなのだ。

まだ部屋を明け渡すまでには時間はある。
顔を見てしまわないように部屋を出た。




目が覚めると、跡部はいなかった。夢?
ひりひりと痛むアナルに指を這わせれば、指に絡みつく精液。
洗い落としたおっさんのものじゃないコトは確か。
舐めれば思わず口元が緩んだ。

貪ってよ、男娼。







END












仲よくしてくださっているフォロワさんの誕生日プレゼントに贈らせていただきました。
アブノーマルを入れたので、こちらにアップです。
ネタ提供ありがとうございました!そして、お誕生日おめでとうございます!!

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