※無理矢理注意













帰りの寄り道は、駄菓子屋からコンビニになって、ファミレスになって、レストランになって、居酒屋になった。
確かに大学の仲間とも楽しい時間を過ごしてはいる。
ただ、一番長い間一緒にいた奴等に勝るものはない。





「あと数分もない。もう少し歩けるか」
「おー…、」

久しぶりの呑み会は楽しかった。
ようやく二十歳になった赤也がどうしてもというものだから、全員が渋々(なんて言いながら、全員きたんだから満更でもないんだろう。)集まったのだ。
学年が上がって忙しくなった柳生も今日だけはと言ってグラスを煽っていた。

赤也の「ブレイコーっす!」なんてとんちんかんな声がふと、頭の中に浮かんだ。
酒はさほど強くもないらしく、少し経つと真っ赤な顔でふにゃふにゃに溶けて。
その姿を見て、ひとしきり笑ったあと、思い出話なんかしたりもした。
ゲラゲラ笑って、酒を呑んで。

赤也が起きたところを見計らってお開き。
帰りたがらない赤也は柳に任せて見送った。
幸村や柳生は次の日も予定があるからと続いて駅の方へ消えていった。
ブン太はまだ呑み足りないと言ってジャッカルを連れて駅とは逆に歩いていった。
そこまで見送って、ようやく緊張の糸が切れたのか。
一気に酔いが回ってきたのだ。
ゆらゆら揺れているような、ふわふわ浮いているような、覚束無い足取りを支えてくれているのは、丁度同じように他の面子を見送った真田。
肩を組むみたいに支えられてゆっくりゆっくり歩く。
俺はいつもこんなに喋っただろうか。
そう思うくらいに口が軽く、あの時のペテンはこうで、赤也が引っ掛かったペテンはなにで、とネタはなぜだかつきなかった。
ぐっ、と腕を引かれて体制を立て直す。
それでもいつも通りには進めない。
ふらふらと真田の方に寄ってはぶつかって、離れて転びかけて。
自分でも驚くほど歩けない様にげらげら声をあげて笑った。

「赤ん坊に戻ったみたいじゃ」
「赤ん坊の方がまっすぐ歩くだろう」
「確かに。掴まってるっていうのに、俺の方がふらふらしとる!」

おっかしいのぅ、そう言ってまた笑うと、真田の溜め息が聞こえた。
真田もかなりの量を呑んでいた。
俺よりしっかりしているとはいえ、頬には赤みがさしていた。

「なんじゃあ、赤ん坊は嫌いかぁ?」
「…そういう訳ではない」
「ほぉ、」

くそ真面目な真田が、ただの酔っぱらいの質問に律儀に答えるのが変に気に入った。
赤ん坊の扱いは慣れてるんか、周りに赤ん坊がおるんか、赤ん坊に怖がられんか、ばんばん質問をぶつけては、真面目に返ってくる答えに、ほぉ、と呟いて笑う。
ぐっ、と腕を引かれて体制を立て直す。
真田の溜め息が聞こえた。

「じゃーあ、」

ぼんやりとする頭では、何を次に言おうかなんて考えてはいない。
ただ、浮かんだコトを口にしているだけ。

「真田は俺んコトが嫌いなんかのぅ、」
「…」
「好かれとらんのかのぅ、」
「…」

くっつくように顔を近づける。
うぶなヤツだ。きっと面白い反応をしてくれるに違いない。
よたよたと縺れる足を動かしながら、真田の耳元で囁くように口を近づけた。

「そりゃあ寂しいのぅ、俺は真田のコト好きなんに」

どんな反応をしてくれるだろうか、ワクワクしながら真田を見ると、鋭い目だけがこちらを見ていた。
怒っているのか、照れているのか分からない、初めて見る表情に、へらりと表情筋を動かした瞬間、

「い…っ!…ふ、ぁ、」

世界はぐるりと回った。
転んだ、のだろうか、ぐるぐる回る頭では分からなかった。
ただ、公園の雑木林の土の植えに仰向けになり、真田と唇が合っているコトは分かった。
ぱっ、と真田が離れる。

その目は、見たコトがない色をしていた。

「さな、だ…?」
「ようやく…、この思いが実る時が来たのだな」

それは、怒りでも照れでもなく、満足とでも言うべき色だった。
次の言葉を紡ぐ前に再び真田の唇が重なる。
ぼんやりと開いていたその隙間から、にゅるりと何かが侵入してきた。
すぐに舌を捕まえられると、軟体動物よろしく絡み合う。
息苦しくてそれから逃れようとしても、それは離れず、不様にねぶられていくしかない。
はふはふと、なんとか隙間から酸素を取り込んでいると、ふと違和感に気づく。

体の上を何かがするすると進んでいくのだ。
蛇や虫なんかではない、もっとごつごつした、そう、骨のようなものが這っていく。
それが服の裾をたくしあげ、直接肌に触れる。
何かを確かめるように動いていたそれが、突然脇腹を下から上に撫で上げた。
自然に体がびくんと跳ねる。
ようやく舌が解放され、酸素を充分に吸えるようになったとき。
真田が、ふっと笑った。

「随分と敏感なようだな」

この瞬間に理解した。

あぁ、俺今、真田に犯されそうになっているのか、と。

逃げなければと、反射的に答えは導き出せたが、体は言うコトを効かない。
ベルトが外される音、チャックが下がる音、外気に晒される下半身。
それだけは、「逃げなければ」でいっぱいの頭でもキャッチするコトができた。
足をバたつかせるも、中途半端に下げられたデニムが足枷になって意味をなさない。
腰を抱かれ、まるで四つん這いのように引っくり返される。
ジ・エンドだった。

「ひっ、あ…!」
「怖がるコトは何もない」

触れたコトのない部分を這う指の感覚に鳥肌が立って止まらない。

「いやじゃ…、やじゃ…、さな、だ」

つぷり、と侵入してきた指に戸惑いを隠せない。
酒のせいだろうか、暴れたからだろうか、それとも恐怖のせいだろうか。
危機的状況だと分かっているのに、足も手も、ぶるぶると震えるだけでなんの役にも立たなかった。
性急に突き込まれては引き抜かれる指をなんとか止めてもらおうと無理矢理に首を回して真田を見やる。

「さ、っ…、真、田!」
「仁王、俺は…、」
「やめ、て…っ、やっ、…うぁっ!」
「俺は、嬉しいのだ」

俺も真田も酒を煽っていた。
馬鹿みたいにテンションが高かった俺も、そして今こうして俺を襲う真田も、理性がなくなってしまったらしい。
真田は、至極幸せそうに笑った。
満足げに、口角が上がっている。

「こうして、お前と気持ちが通じたコトが」

押し込まれていた指が抜けて、それ以上の痛みが走った。
声が、でない。
けれど、涙は出た。
悔しくて?寂しくて?そんなものではない。ただひたすらに痛い。
出口でしかなかったそこが初めて別の役割を強いられたのだ。

「いっ、あぁあ、あああ…っ!し、ぬ…!しぬぅ!」
「縁起、でもない…っ。これからの幸せだけ、考えていろ…っ」
「ひっ、う、あぁ!や、じゃぁ、たすけ、いっ!だし、て!ぬいて…!」
「く…っ、いいだろう、出してやる。受けとれ…!」

腰にかかった真田の手が、突きこまれたそれが小さく痙攣するように震えた。
その欲が外に出される、抜かれるコトもなく、その独特の痙攣は吐精を教えてくれた。
絶望。それだけだった。
再び打ち付けられ始めた欲を感じながら、どんどんと意識が遠退いて行った。

酒のせいだろうか、頭が回らない。
明日から真田にどう接しろというのか、答えを考えるのをやめた。
















フォロワ様とのおしゃべりから。
酒を煽っての無理矢理も大変美味かと。

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