「なんだ」
「別に」
華奢に見える癖に堅い背中から抱き付いた。
お腹の前で手を組んだけれど、嫌がられるコトもなく、どかされるコトもなかった。構ってもくれないけれど。
「何か用か」
「別に」
抱き付いたまま、背中にぎゅっと顔を埋めたまま動けなくなってしまった。
ユニフォームじゃないのが珍しくて抱き付いたまではよかったのだけれど、
くん、
「何をしている」
「別に」
くんくん、
鼻を引くつかせると、クゥッと心臓が縮まるんじゃないかっていういい匂いがした。
洗い立てのユニフォームも清潔で好き。
でも、これはこれでとってもいい。
制汗剤の匂いに離れられないと思ったのは初めてだ。
「おい」
ひたり、体温の低い俺の手よりも冷たい手。
爪は短いから怪我なんてしない。
くんくん、
もう少しだけこうしていてもいいだろうか。