馬鹿じゃないのか。
ガタガタする脚を抑えつけるように忍足の隣にしゃがみ込んだ。

「寒いんじゃけど」
「えぇやん、来年までなんて保たんやろうし」

たった2本の線香花火。
今年の夏のやつが残っているのを見つけたのだ。
冬のクソ寒い中でやってられるか、と拒んだものの引きずり出されてしまった。
風がないのが救いである。

100均で買ったライターがカチャカチャ何度か点くのを嫌がる。
溶けて小さくなって久しいアロマキャンドルに火が灯った。
ゆーらゆぅら、

「ほな先に落ちた方が夕飯の準備な」
「ぴよっ」

同時に炎の中に花火を突っ込む。
ぱちり、と1つ光の花が咲いた。
ぱちりぱちり、と増えていく火花を見ながらゆっくりと手元へ引き寄せる。
忍足も同じように炎から花火を出していた。
姉貴の部屋から掻っ払ってきたアロマキャンドルは甘ったるい匂いがする。
少しくらくらしながらまぁるくなった線香花火の先っぽを見る。

ぱちっ、ぱちりぱちり、

さっきよりも随分大人しくなった花火に哀愁なんて感じる訳で。
ぽたり、と向こう側で光が落ちるのを捉えた時に、少し遅れて俺の花火も先が落ちた。
しん、として一瞬寒いのを忘れた。
アロマキャンドルの炎が揺れた。
炎の真上でキスをする。
一瞬だから煤も付くまい。
離れる瞬間が惜しいと思うのが悔しいコトだ。

「夕飯の準備は、お前さんな」

花火とキャンドルを片付ける忍足の背中に言って、先に部屋に入った。








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