※成人設定
ベランダに出ると隣からもわりと白い煙があがっていた。
火事、ってコトではなくてヘビースモーカーの紫煙である。
「そろそろ煙草辞めたらどうや?」
「俺の嗜好品じゃき、口出し無用じゃ」
はふ、と取り込んだ煙を藍色の空に吐き出す。
酷く不健康な白だった。
「飯は」
「なにかあったかのぅ」
「冷蔵庫になんかないんか」
「キュウリ」
「は」
「キュウリがあったかもしれん」
壊れた脱出壁の大穴から仁王の部屋はよく見える。
煙草を押し消しながら開けた室内の冷蔵庫にドン引き。
本当にキュウリが2本ぽん、と置いてあるのみだった。
ほぉら、と見せつけられるように開かれた冷蔵庫からキュウリを2本掴むと再びベランダに戻ってくる。
一体コイツはどんな生活をしているのか。
訝しんでいると、向こうのベランダで、ぼきん、なんてなんとも湿気た音がした。
もしゃもしゃもしゃもしゃ、
「ほれ。俺の奢りじゃ」
「お前は河童かなんかか」
差し出してきたいつ買ったか分からないキュウリを突っ返した。