後ろを振り返ると、バスの電光版が見えた。
ゆっくり歩く先輩に合わせて歩いてたら間に合わない。
先輩早く!なんて急かしたのにマイペース。
きっとその癖バスを逃すと、赤也のせいでバス逃したなり、なんて文句言われるに違いない。
早く来てくださいね!と聞こえてないとは言わせないくらいにデカイ声で言って先にバス停に走った。



中途半端な時間だからか、バスの中はガラガラで爆睡してるおじさんと丁度降りるお姉さんと、携帯弄ってるお兄さんしかいなかった。
お姉さんが降りてる間にのそのそステップを上がって定期を見せると、待ってた俺を追い越してのそのそバスの一番後ろの窓際に座った。
追って隣に座る。

「なんじゃ狭っくるしい。空いとるんじゃから、もう少し離れて座ればよか」
「いいじゃないっすかー!」

おじさんは起きないし、お兄さんのヘッドフォンからは音漏れがしている。
次のバス停でもその次のバス停でも誰も乗って来なかった。

そーっと、そーっとだ。

脚の真横に置きっぱなしの仁王先輩の左手に右手を乗っけて軽く握った。ひんやりした。
最近寒くなってきて、仁王先輩は嫌な顔しかしない。
気のせいか、少し機嫌も悪い。
そういえば夏の間は蝉並みに暑い暑いって言ってた癖に、最近じゃあ口が凍って動かないくらいに喋らない。
常にうとうとした白クマがもそもそ動いているみたいだ。(これはいつもかもしれない。)
あ、柳生先輩が言ってたっけ。
仁王先輩は冷え症らしい。
キンキンに冷えた指先はある意味凶器よりも怖い。



外が真っ暗になっていて、窓ガラスに仁王先輩の顔が映っていた。
びゅんびゅん流れていく景色を見てる、のに、何故だかほっぺたが赤かった。
誰か暑がりが座ったのか、送風機のカバーが閉められて、上の窓が3センチくらい開いている。
きゅっと指に絡まった仁王先輩の手がさっきよりも冷たい気がしてもっとちゃんと握った。








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