仁王、帰ろうか。
借り物の自転車を押しながら言った時の仁王の爆笑ったらなかった。
すぐに後悔するコトになるなんて知らずに。
後から聞くと、あまりにも似合わなかったらしい。




「スピード落ちてるよ」
「あ、ほか…!」

ひぃひぃはぁはぁ言いながら自転車を漕ぐ仁王は冬だと言うのに汗をかいていた。
荷台に跨がったまま仁王の背中を叩く。
ラケットバック2つと男2人は重すぎるなんて弱音を吐くからトレーニングに付き合ってやってるんじゃないか。
家まで送れよ。と言った時の仁王の顔と言ったら。
血の気が引くっていうのを目の当たりにしているみたいで面白かった。
坂道が多いところなのは、何度か遊びに来ている仁王にはバレバレだったかな。

「きっちく…!お、にぃ…!」
「なんだって?聞こえないな」
「っ、もう、いい…っ!」

立ち漕ぎを続けた仁王はそろそろ限界みたいで少しフラフラしながら頂上にたどり着いた。

「っはぁー…、もう幸村と2ケツなんてせん…」
「つれないコト言うなよ」

黙れ鬼ぃ、なんてため息混じりに悪態を吐かれた。
ひどい言われようだなぁ。

「じゃあ頑張った仁王にご褒美あげるよ」

言うと同時に少しだけ荷台から腰を浮かして、汗ばむ仁王のうなじにキスをした。
制汗剤の香りが鼻をついて、銀色の尻尾な頬を掠める。
一瞬だけだよ、一瞬だけ。
荷台に腰を落ちつけると、さっきまで赤くなかったはずの耳が赤くなっていた。
恥ずかしいヤツ。








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