ふわふわのイヤマフを買った。
ファーが気持ちいいから久しぶりに気分がいい。
柳生にも、ブン太にも、赤也にも、ジャッカルにも、果ては幸村と参謀にも機嫌が良さそうだと笑われた。
構いやしないさ、新しく手に入れたイヤマフがお気に入りなんだから。
やっぱり夕方は寒い。
マフラーも、手袋もしっかり着けてみんなより一足先に部室を出た。
ふわふわは、強い風に少し揺れる。
「仁王!」
あったかい空気と、冷えた空気の向こう側から名前を呼ばれる。
あ、もしかして今日サボったのがバレたのか。
寒くて止まらない足を動かし続ける。
真田だ。
俺の機嫌がいいのも、新しくイヤマフを買ったのも気付かないにぶちん真田だ。
もしくはイヤマフを知らないのか。
えぇいどれでもいい、気付かない振りをしてやろう。
振り返らずに歩く。
「おい、仁王」
「聞こえぬのか、仁王」
「返事をせんか!」
後ろからの声は全部聞こえているけれど、無視。
聞こえないフリを決め込んだ。
「仁王、今日こそお前に言いたいコトがあるのだ」
さぼるなー、なんて聞き飽きたぜよ。
真田からは見えないからぎゅむ、とマフラーに顔を埋める。
「好き、だ…!」
は ?
いや、よくできた足だコトで。
頭の混乱は全く気にもしないかのように前に進み続けた。
好き、だと?
「お前が好きだ、と伝えたかったまでだ」
立ち止まったのか、どんどん小さくなる語尾を聞きながら顔が熱くなるのを、感じた。
明日あったらイヤマフを外して聞いてやるから、待っときんしゃい!
冬の真仁