「さむぅ〜!」

鍵の開く音がして、ひゅうと冷たい風が肩を通りすぎた。
ひんやり、
せっかく温まった空気を持っていかれるのはなかなか癪だ。
一気に五月蝿くなったドアを睨み付けると、そんなのお構いなしにひぃひぃ言ってるオッサンが1人。
コタツの布団を捲りあげて肩を覆うと広がった隙間から中の温度が少し下がった。ぷぴーな…っ。

「めっちゃ寒いし、風は強いし冷たいし。風邪引いちゃう!」

いい年こいたオッサンが言う台詞ではない。
言うならば、こっちの方が「引いちゃう!」である。ドン引きじゃ。
コタツの上に用意したみかんに手を伸ばした。

「っ!」

ひたり、と足に冷たい感触。
一気に全身に鳥肌がたった。
せっかくぬくついた体を一気に恐怖に叩き込んだオッサンの足。
この野郎。

「おーおー、若者の足ぬくいんやなあま」
「おい…、」
「オサムちゃん全身冷え冷えやからな。あっためてたってー」

細いコタツの足を1本挟んで向こうにいるオッサンが抱きついてきた。
手も冷たいし、髭痛い。
じわじわ取られていく体温にもう我慢ならん。

「あと心も頼むでぇ、仁王くぅ、」
「おいこらオッサン、覚悟しんしゃい」

オッサンを部屋から追い出してお詫びの角煮まんを買わせたのは、まぁ許されるんじゃないかなと思っている。









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