※まさはるくんシリーズ


「とりっく!おあ!とりーとさん じゃ!」

おかしくれんとイタズラするなり!おかしくれんとこうじゃー!と、大きめな熊の笛入り人形を全力で抱き締める狼気取りな子猫が目の前にいた。
ぴぃ、なんて熊の笛が鳴った。



柳生くんとまさはるくん。

「とりっく!おあ!とりーとさんじゃ!」

小さな彼の首にはいつもはない灰色のファーが巻き付けられていた。
きっと母から借りたのだろう。
寒がりさんにあげちゃおうかしら、と言っていたのを思い出した。

「おや仁王くん、今日は一体なににイリュージョンしていらっしゃるんですか?」
「おおかみさんじゃ!」

がおーっなんて楽しそうに鳴いた彼に少し笑った。

「そうでしたか。それでは小さな狼さんにはキャンディを」
「ふふん!したらイタズラはせん!」

キャンディをぶら下げていたバスケットにいれると、またの!と大きく手を振りながら仁王くんは走ってどこかに行ってしまった。



手塚くんとまさはるくん。

「やぎゅーもどき!」

聞き覚えがある声に呼び止められて振り向く。

「お前は、柳生の家の…」
「とりっく!おあ!とりーとさんじゃ!」

はて…。満面の笑みで差し出された手を意味を考える。

「やぎゅーもどき!はよ、おかしくんしゃいよぅ!」

待ちきれないのかバタバタと足踏みを始める子猫を見てようやく思い出す。
そうか、ハロウィンか。
練習前に大石から貰ったチョコが1つ入っていたので、皿にされた手の上に置いてやる。

「チョコじゃー!」

いそいそと小さな手にぶら下がるバスケットにチョコをいれると、おかしくれたヤツにはイタズラはせんからの!と嬉しそうにそこから去っていった。



千歳くんとまさはるくん。

前から見覚えのある姿がとてとてとこっちにやってくるのが見えた。
よーく目を凝らすと、

「お、にゃんこたい〜」

柳生のとこのにゃんこ。
今日はやけに楽しそう。

「おっ!ちぃ!」
「久しぶりばい、にゃんこ」
「むぅ、今日の俺はにゃんこじゃなか!」

おおかみじゃー!がーっ、なんてミニ狼。

「むぞらしかっ」
「むぎゃっ。ちぃ、苦しいぜよ〜」

ハグしちゃれば、もふもふのファーが気持ちいい。

「ちぃ、ちぃ!」
「ん?」
「とりっく!おあ!とりーとさんじゃ!」
「あぁ、ハロウィンだったとね」

なんかあったかねぇ。
ズボンのポケットを漁ると、朝に買ったビーフジャーキーの残りが少し出てきた。

「これでよかかねぇ?」
「じゃーきー!ん、よかよ!」

あ、と気づいた時には、また遊ぶなりー!なんていいながら腕から逃げられとった。
あーあ。



切原くんとまさはるくん。

「とりっく!おあ!とりーとさんじゃ!」
「とりっ、え?とりさん?は?」

柳生先輩のトコの猫が来たかと思ったら、訳の分からないコトを言われた。
え?は?なんだって?
向こうは向こうで俺が何を言ったのか分からなかったのか、きょっとん、としている。

「…」
「…ぷりっ」

…。
…。
え?

「おかしくれんと、いたずらするなり!とりっくおあとりーとさんじゃ!」
「ハロウィン!」

二人して大声を出したら、隣にいた人にめちゃくちゃ見られた。
恥ずかしい。

「おかしは?」
「え、ねぇよ?」
「ぴよ?」
「ねぇよ?」
「ぴ、ぴよ…?」
あわわわわっ!なんで泣くんだよ!
じわーっと涙目になる猫に焦って、鞄を漁る。

「こ、これ!これやるから泣くなって!」

この間丸井先輩にコンビニ連行された時に買ったアポロチョコが出てきた。
何粒か食ったけど、まだ食える!

「ぴんくいチョコじゃ!いちごちゃんじゃ!」

皿にされた手に何粒か出してやると、ぱくりとそれを食って、猫は去っていった。
…幸村部長と丸井先輩に集られないうちにお菓子買おうっと。



U17とまさはるくん。

「そーとーみーち!」
「あぁ、いついつかの猫じゃあねぇか」
「おや、猫さんいらっしゃい」
「とりっく!おあ!とりーとさんじゃ!」

とりーとさん?一体なんだそれは。
頭を捻りながらも、多分ハロウィンのお決まり文句だろうから魚型のクッキーをくれてやる。
大和はチョコパイ。

「ありがとうぜよー!」
「おい、とりーとさんってなんだ?」
「とりーとさん、とりさんみたいじゃろ?」

またなー!と大きく手を振りながら猫は帰っていった。
チョコの匂いがぷんぷんした。

「おい大和よ、とりーとさんって可愛いのか」
「さぁ?」



徳川さんとまさはるくん。

「とりっく!おあ!とりーとさんじゃ!」

この間の猫がそこにはいた。
灰色のファーが気持ちよさそうである。

「ハロウィンか?」
「そうじゃ!おかしくれんとイタズラするぜよ〜っ」
「バスケットにもたくさん入っているようだが?」
「みんなにもらったんじゃ。いっぱいあるなり!」
「そうか、よかったな」

銀色の髪を撫でてやる。
ベンチのクーラーボックスに入れてあったプリンをやると、嬉しそうにバスケットにし舞い込んでいた。










ハッピーハロウィン!!


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