大阪と神奈川。
どうやったって3時間はかかる。
いつからか女々しくなったなぁと苦笑。
充電が死にそうな携帯に充電コードを繋げた。
トゥルルルル、トゥルルルル、
「はい」
「あ、出た」
テストが近いと言っていたから出ないかと思ったのに。
「分かっとるんじゃったらかけてくんな」
ガサガサと色んなものに擦れて当たる音がして、止んだ。
肩に挟んだとかそんな感じだろう。
「、」
静かにしてみる。
ペンが動く音なんて小さすぎて携帯のマイクじゃあ拾えないようだ。
実は俺からの電話を待ってくれてたとか、そんな淡い期待してたけども。
自過剰やったか。
少しの間黙っていると向こう側で盛大に溜め息を吐かれた。
失礼なやっちゃ。
考えてみたらなんだかもやっとした。
例えば俺が向こう行ったりだとか(練習の休みが多いからやけど)、電話かけるのも俺からだったりとか(用事ない時はかけないって知っとったけど)、あれ俺ばっかりが好きなんか?
これって、
「不公平?」
「なにがじゃ」
「ううん、好きやで」
「ん」
そうや、好きも俺からばっか。
ふと洋画を思い出した。
アイ ラブ ユー トゥ 。
「俺ばっか好きみたいやん」
はははははっ。
頭の中で入れた言葉が何故か笑い声と一緒に口から出た。
「…なんじゃ、そこらの女子みたいじゃのぅ」
「…すまん」
やらかしたなー、なんて今度はしっかり頭の中だけで。
嫌われたりなんかしたらどないしよ、実は内心ビクビク、心拍数が唐突に上がって思わず大きく息を呑んだ。
「…」
「…」
「…」
「…ばーか」
俺はな、勉強する時は携帯の電源落とす派なんじゃ。暇潰しで電話かけてくるヤツなんかの相手はしない訳。でも、今回は電源落とさなかったんじゃ。赤也とか丸井はいっつもかけてくるからテスト期間は着拒。俺の携帯の着信履歴、バカ2人いれて3人しかおらんのじゃけど?
「わたし、死んでもいいわ」
くつくつなんて笑いを残して、口を挟む余裕もなく、一方的にまくしたてられて電話は切れた。
別の意味で心拍数が上がる。
もごもごとニヤけそうになる口元を隠した。
別に誰に見られる訳でもないけれど、なんだかもったいなくてしっかりと隠した。
赤也丸井白石で着信履歴が埋まってる→電源落とさない→白石からの電話待ってた
そして、ちゃんと理解せずに使った「私、死んでもいいわ」は「月が綺麗ですね」から。