王者立海に死角なし。ばばーん、
なんて効果が頭の中でついて、思わず固まった。
「えぇと…、確か立海のぉ…」
「仁王じゃ」
「あぁ!せやせや、仁王くん」
うちの学校にはおらん顔やなぁと思ったんやぁ、はっはっはっ。
…どうやら冗談がうまく通じへんらしい。
じっと見つめられると、こう、居心地が悪い。蛇に睨まれた蛙、かわず。
ひやぁっと背中に冷たい汗が流れてきた。
「…でー、仁王くん?大阪までなんの用やろか?」
「…」
ひーっ。白石やら謙也やらなんでタイミングよくおらんのや!
コケシでもそうめんでもやるから、さっさと空気読んで来いや!ケーワイ!
「っあー…、白石に用事か?」
フルフル、
…ちゃんと言葉にしなさいヨ。
思うだけで言わない俺って、大人やなぁ…。(ビビってへんし。)
「謙也か?」
フルフル、
「小春?」
フルフル、
「一氏や?」
フルフル、
「石田兄ちゃうか?」
フルフル、
「あー、千歳か!」
「…違うなり」
ようやく喋ったかと思えば、明らかに不機嫌顔。
あかん、オサムちゃんもう泣きそ。
誰も通ってくれないこの道、一生恨んだるで。
「せ、せやったら、誰に用事なん?」
「…、」
途端に俯いた仁王くんの口元がもそもそ動いた。
なんだ って?
もう一回、耳を近づけながら言った。
あれ、
「仁王くん、顔真っ赤やけど」
「っ!」
りんごみたいに真っ赤になった頬に触れてみる。
若い子ってズルいなぁ、すべすべや。
あっつい頬に触れていた手に仁王くんの手が重なった。
え?
「お、俺が用事があるのは、」
真っ赤な顔、あ、目がうるうるしてる。
ちょっと可愛いかも。
「お前さんじゃ…っ」
気の迷いだったのかもしれない。