※出会いが全国大会だったら
整列の一番後ろに並んで、こっそりいなくなるのはとんでもなく簡単だった。
日陰に入ったのにじめじめして蒸し暑い。
頭も抱え込むように膝を抱えた。
終わった、俺たちの夏が終わった。
負けた、負けたのだ。
ぷつり、と手のひらで何かが潰れた気がした。
「おぉ〜っ、立海さんは表彰式に出なあかんのとちゃいますか〜?」
頭の上から抜けた声が聞こえた。
あー、この声は確か、
「なんや、寝とるんか?」
四天の顧問。
つんつん、と指先でつつかれている感覚。
反応しようにも、何故だか動けない。
頭が重くて上がらない。
ずっしりと重いのは頭だけじゃあないようで。
膝を抱えたまま俺は動けなくなった。
「おーい、体調悪いんかぁ?」
負けちゃいけない、絶対勝つコト。
負けちゃあ、いけない。
ひくり、と肩がおかしく動いた。
あ、
「泣いとるん?」
悔しい。
ぽんぽん、と背中を叩かれて反射的に四天の顧問に抱きついて泣いた。
周りには誰もいない。
表彰式は終わっただろうか。
もう少ししたら、泣き止んで、探しにくる柳生に笑うから、今は
「泣、かせて、くんしゃい」
大人な顧問はただ背中を叩いてくれた。